なにわ筋線構想と変貌する新大阪駅

投稿者: | 2018-10-06

1.なにわ筋線構想 2.鉄道各社となにわ筋線 3.変貌する新大阪駅 4.「新大阪駅」となるはずだった東淀川駅

 

新大阪駅駅名標(2019年5月)


なにわ筋線構想

大阪の南北を走る大きな道路には御堂筋をはじめとして堺筋、四ツ橋筋などがありますが、それぞれの地下に御堂筋線堺筋線、四つ橋線が走っています。加えて、大阪市内の主要な南北道路の一つとして福島から西成へ至るなにわ筋があります。このなにわ筋の地下を通り、大阪ミナミの難波付近をまでを結ぶ計画があります。

 

大阪府・大阪市・JR西日本・南海電気鉄道阪急電鉄は大阪から関西空港へのアクセスルートとなるなにわ筋線の構想について、2031年春の開業を目指すことで合意しました。この構想はもともと1980年代に浮上したものでしたが、長い間実現を見ることはありませんでした。

 

なにわ筋線構想は、新大阪駅から東海道本線支線(通称「梅田貨物線」)を通り、この貨物線を一部地下化した上で、大阪駅北側に北梅田駅/うめきた(大阪)地下駅(仮称)を新設し、ここからなにわ筋の地下を通って難波付近まで結ぶという新線を敷設するというものです。

 

JR西日本は2020年(令和2年)、この新駅と従来の大阪駅との間に改札内連絡通路を整備し、営業開始時には大阪駅地下ホームとして取り扱うと発表しました。この地下ホームと従来の大阪駅との移動には6分ほどかかるということです。なにわ筋線では北梅田駅/うめきた(大阪)地下駅(仮称)の他、途中駅として中之島駅(仮称)、西本町駅(仮称)を新設し、これより線路を分岐して、一つはJR難波駅へとつなぎ、一つは南海新難波駅(仮称)を新設して南海線へとつながるというものです。

 

なにわ筋線構想

西本町駅から北側についてはJR西日本と南海電気鉄道との共同運行ということになり、空港特急「ラピート」は西本町駅通過後に分岐し、南海線を通って関西空港へと向かうことになります。新設される南海新難波駅(仮称)の建設予定地は大阪難波駅(近畿日本鉄道阪神電気鉄道)付近となっており、現在の南海難波駅から約200メートル~300メートル離れています。


鉄道各社となにわ筋線

JR西日本は現在、関空特急「はるか」の運行については、京都駅から新大阪駅を経由した後、大阪駅を通らずに貨物線に入り大阪環状線を経由して関西空港へ至るという経路をとっています。大阪環状線では関空特急「はるか」の他、大阪環状線、大和路快速などさまざまな列車が運行しているため過密ダイヤとなっています。

 

2023年の開業を予定している北梅田駅/うめきた(大阪)地下駅(仮称)が新設されると、この関空特急「はるか」新大阪駅を出発した後、新生「大阪駅」に停車し、大阪環状線経由せずになにわ筋線を経由して関西空港へと至ることになり、その所要時間は20分以上短縮されると考えられています。

 

南海電気鉄道においても、空港特急「ラピート」が関西空港からなにわ筋線を経由して北梅田駅/うめきた(大阪)地下駅(仮称)、新大阪駅と直通運転できる可能性があり、新規顧客獲得へと期待が高まります。

 

空港特急「ラピート」(2017年1月)

 

阪急電鉄では北梅田駅/うめきた(大阪)地下駅(仮称)から十三駅を経由して新大阪駅へと向かう新たな連絡線(なにわ筋連絡線・新大阪連絡線)の敷設を検討しているといいます。地下線によりなにわ筋線と結ぶ予定であり、実現すれば、南海電気鉄道との直通運転の可能性が出てきます。

 

直接的にこの計画に関与していない京阪電気鉄道においても、2008年(平成20年)に開業した中之島線はいわゆる盲腸線となってしまっており、なにわ筋線が開業すれば中之島駅の孤立が解消されて利用者が増えると考えられています。


変貌する新大阪駅

こうした計画が実現した場合、新大阪駅は現在乗り入れている東海道本線おおさか東線御堂筋線に加えて、なにわ筋線阪急線、さらに北陸新幹線やリニア新幹線が乗り入れることになり、更なる巨大ターミナルへと変貌する可能性があります。

 

新大阪駅在来線ホームの5番のりば(2019年4月)

 

新大阪駅では2012年(平成24年)よりホームの改良工事を重ねてくると同時に、2019年(平成31年)にはおおさか東線新大阪駅乗り入れにともない発着ホームの変更が行われています。

 

新大阪駅でおおさか東線の列車と並ぶ特急「ひだ」(2019年5月)

 

現在では、1番・2番のりばおおさか東線および関空特急「はるか」特急「くろしお」3番のりばはきのくに線(特急)および関空特急「はるか」4番のりば北陸本線(特急)およびJR京都線5番・6番のりばJR京都線7番・8番のりばはJR宝塚線・JR神戸線9番・10番のりば福知山線(特急)特急「スーパーはくと」となっています。

 

また、この在来線ホームの1番のりばの西側にはホームをもたない梅田貨物線(通称)が複線で走っていますが、この線路は次の大阪駅には向かわず、かつて存在した梅田駅(通称「梅田貨物駅」/現在は梅田信号場)を経由して大阪環状線の福島駅付近を通過し、西九条駅へと至る東海道本線支線(通称「梅田貨物線」)となっています。

 

梅田貨物線を通って西九条方面へ向かう「桃太郎」(2019年6月)

 

新幹線ホーム(4階)はほぼ東西に設置された高架駅となっており、在来線ホーム(2階)とは斜めに交差するような形となっています。新幹線の改札口は在来線ホーム(2階)より1フロア上の3階にあります。4階となる新幹線ホームでは、20番・21番・22番のりば山陽新幹線23番・24番・25番・26番のりば東海道新幹線山陽新幹線27番のりば東海道新幹線となっています。

 

カモノハシのイコちゃん(2019年6月)

 

2015年(平成27年)には在来線の改札内にエキマルシェ新大阪が開業しています。エキマルシェはJR西日本のグループ企業が運営するいわゆる「エキナカ商業施設」です。「エキナカ」というビジネスモデルは首都圏ではある程度定着しているにもかかわらず、関西圏においてはほとんど定着しておらずエキマルシェ新大阪はJR西日本では3店目の出店となっています。

 

1号店はエキマルシェ宝塚、2号店はエキマルシェ大阪となっていますが、2店舗とも改札外での営業となっており、エキマルシェ新大阪が事実上初めての「エキナカ」ということになります。おみやげや飲食店、書店などが出店していますが、そのうち駅鉄ポップショップではさまざまな鉄道グッズを販売しています。ICOCAのキャラクターのぬいぐるみも販売しています。

 

駅鉄ポップショップの袋(2019年6月)


「新大阪駅」となるはずだった東淀川駅

巨大ターミナルへと変貌しつつある新大阪駅の隣りの東淀川駅は、方角的には新大阪駅の北側に所在しますが、その駅間距離(営業キロ)はわずか700メートルしかありません。

 

取り壊される東淀川駅東口駅舎(2018年11月)

 

東淀川駅はもともと、新幹線敷設計画のもととなった弾丸列車計画において「新大阪駅」となる予定でした。ところが、東淀川駅周辺の工業発展により人口が増加し、新幹線敷設に先んじて東海道本線上に東淀川駅として設置されることとなりました。

 

取り壊される東淀川駅東口駅舎(2018年11月)

 

2019年(平成31年)にはおおさか東線が全通し、東淀川駅のホームに立つとおおさか東線の新大阪行きの列車は京都方面から走行してくることになりますが、おおさか東線の列車が走る線路上には東淀川駅のホームがないため、おおさか東線の列車はこの駅には停車しません。また、新大阪駅から出発したおおさか東線の列車は東淀川駅を通過した後、高架線へと入り大きく東へと弧を描いて南吹田駅へと向かいます。

 

おおさか東線の「直通快速」として利用される207系(2019年4月)

 

現在東淀川駅は、大阪市淀川区がその所在地となっているにもかかわらず東淀川駅となっています。東淀川駅が開業したのは1940年(昭和15年)のことですが、当時の東淀川駅の住所は文字通り大阪市東淀川区にありました。

 

旧東口駅舎の横に展示されるかつての東口駅舎の写真(2018年11月)

 

1974年(昭和49年)に大阪市において新たな区の編成が行われたため、駅の所在地が大阪市淀川区となり、大阪市淀川区にある東淀川駅となってしまいました。

 

取り壊される東淀川駅東口駅舎(2018年11月)

 

東淀川駅周辺にはいわゆる「開かずの踏切」があり大きな課題となっていました。「開かずの踏切」とはピーク時にもかかわらず、1時間あたり40分以上遮断される踏切をさします。

 

取り壊される東淀川駅東口駅舎(2018年11月)

 

2014年(平成26年)の調査によると、踏切横断長が21.4mある北宮原第1踏切は踏切遮断時間が1時間あたり最大56分(10.9時間/日)、踏切横断長が24.8mある北宮原第2踏切は踏切遮断時間が1時間あたり最大40分(9.3時間/日)、踏切横断長が46.8mある南宮原踏切は踏切遮断時間が1時間あたり最大57分(16.3時間/日)となっています。

 

取り壊される東淀川駅東口駅舎(2018年11月)

 

線路を跨いで東西方向に行き来するためには踏切を通らない場合、駅地下道や歩道橋を通らなければならず、特に東淀川駅西口駅舎からはバリアフリー未対応であったため、こうした踏切を横断せざるを得ない状況がありました。このため、JR西日本は2018年(平成30年)にこれらの踏切を廃止するとともに東淀川駅を橋上化を実施しています。

 

取り壊される東淀川駅東口駅舎(2018年11月)

 

この工事により、3つの踏切が廃止された他、東口駅舎および西口駅舎が撤去されて地下通路は閉鎖されました。また、東西自由通路が設けられて、駅の西側からもバリアフリー対応となりました。

 

新設された東側階段(2018年11月)