松尾芭蕉『奥の細道』の出発地「千住」

1.北千住駅に乗り入れる路線 2.千住宿と松尾芭蕉 3.北千住駅の歴史 4.北千住駅大改装とクレヨンしんちゃん 5.南千住駅

 

JR北千住駅行先表示板(2017年8月)


北千住駅に乗り入れる路線

北千住駅は東京都足立区にあり、今では常磐線(快速線)、東京メトロ千代田線・日比谷線、東武スカイツリーライン、つくばエクスプレス線の4社5路線が乗り入れるターミナルとなっています。

 

つくばエクスプレス線北千住駅(2022年6月)

 

このうち、千代田線は常磐線(各駅停車)と小田急線との直通運転、東武スカイツリーラインは日比谷線に加えて半蔵門線、東急田園都市線との直通運転を実施しています。

 

北千住駅を出発する東武線「特急リバティ」(2022年6月)

 

さまざまな路線が交差する北千住駅の1日あたりの乗降客数は2018年度(平成30年度)において約160万人にものぼり、乗降客数の世界ランキングでは東京駅を抜いて第6位となっているそうで、世界有数のターミナル駅といえます。

 

東京駅(2019年3月)


千住宿と松尾芭蕉

2代将軍・徳川秀忠により久能山(静岡県)に神葬されていた徳川家康は1617年(元和3年)、日光に移され祀られました。その後、3代将軍・徳川家光により現在のおもな社殿が建て替えられ、1645年(正保2年)に宮号を賜って「東照宮」と称されるようになりました。

 

千代田線・常磐線(各駅停車)北千住駅駅名標(2022年6月)

 

千住宿(せんじゅしゅく)はかつて奥州街道および日光街道の最初の宿駅でしたが、東照宮の社殿が建立されて以来、人馬の中継駅として、また大名たちによる日光参詣への道の宿場町として繁栄してきました。その江戸時代、1689年(元禄2年)に松尾芭蕉はこの地から「奥の細道」へと旅立っていきました。

 

東武線ホーム2階にある「松尾芭蕉旅立ちの地」の看板(2022年1月)

 

松尾芭蕉の『奥の細道』の序文は「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」の冒頭文ではじまりますが、次の旅立ちの場面には「千じゅといふ所にて舟をあがれば、前途三千里の思い胸にふさがりて、幻のちまたに離別の泪をそそぐ」とあり、「千じゅ」(千住)の文字が見えます。


北千住駅の歴史

明治時代になると、千住は隅田川に架かる千住大橋を境として、北と南に分かれるようになりました。千住大橋の北側に北千住駅ができたのは1896年(明治29年)のことでした。それは現在の常磐線(快速線)の前身となる日本鉄道土浦線の駅として誕生したものです。

 

常磐線(快速線)北千住駅(2022年5月)

 

その3年後の1899年(明治32年)には、東武鉄道伊勢崎線の北千住~久喜間が開通し、北千住駅は乗換駅となりました。1906年(明治39年)になると日本鉄道土浦線は国有化され、1909年(明治42年)に「常磐線」となりました。その後、1962年(昭和37年)には日比谷線の駅、1969年(昭和44年)には千代田線の駅が開業します。


北千住駅大改装とクレヨンしんちゃん

2019年(平成31年)に公開された映画『クレヨンしんちゃん新婚旅行ハリケーン~失われたひろし~」の主題歌となる「ハルノヒ」(あいみょん)では「北千住駅のプラットホーム 銀色の改札」とうたわれます。北千住駅は、後にしんちゃんの父となる「ひろし」が「みさえ」にプロポーズした場所だそうです。

 

東武北千住駅2階ホーム(2022年9月)

 

ひろしがみさえにプロポーズをしたと思われる昭和時代の終わりの頃の北千住駅は、平成時代に入ってから行われる大改装を体験しておらず、プロポーズをしたのはかつての北千住駅だったと想像できます。

 

北千住駅3階ホーム駅名標(2021年6月)

 

1990年(平成2年)の伊勢崎線と地下鉄日比谷線ホームを拡幅工事を皮切りとして大改装がはじまり、1997年(平成9年)に駅改良工事が完了し、現在のような駅構造となりました。1階は東武スカイツリーライン専用で1番線~4番線と特急専用ホームが設けられており、3階は地下鉄日比谷線および日比谷線から直通する東武スカイツリーラインの各駅停車用で5番線~7番線が設けられています。

 

東武線1階ホーム北千住駅(2022年3月)

 

2階には改札口とショッピングゾーンがあり、常磐線(快速線)と2005年(平成17年)に開業したつくばエクスプレス線への乗換口となっています。

 

つくばエクスプレス線北千住駅(2022年11月)


南千住駅

一方、千住大橋の南側の南千住駅が開業したのも、北千住駅と同じ1896年(明治29年)のことでした。

 

つくばエクスプレス線北千住駅(2022年3月)

 

これも日本鉄道土浦線の駅として開業しました。1961年(昭和36年)には日比谷線、2005年(平成17年)にはつくばエクスプレス線が開業しました。

 

つくばエクスプレス線南千住駅(2019年1月)

 

この南千住駅付近と先の北千住駅付近をまとめて「千住宿」となりますが、千住宿は江戸四宿(ししゅく)の1つとして栄えました。

 

つくばエクスプレス線南千住駅(2019年1月)

 

江戸四宿とは、五街道のそれぞれにおいて日本橋に最も近い宿場町のことをさし、千住宿の他、板橋宿(中山道)、内藤新宿(甲州街道)、品川宿(東海道)がこれになります。

 

つくばエクスプレス線南千住駅(2019年1月)