奈良電気鉄道(奈良電)

▼奈良電気鉄道(奈良電)は後に、現在の近鉄京都線となる路線を敷設した鉄道会社。▼1963年(昭和38年)に近畿日本鉄道に合併された。▼奈良電気鉄道(奈良電)が路線を敷設する以前、奈良鉄道が1895年(明治28年)に京都~伏見間を開通させている。

伏見城(2017年12月)

▼これは、現在の近鉄京都線と同じルートだが、奈良電気鉄道奈良鉄道は同じ鉄道会社ではない。▼奈良電気鉄道が設立されたのは1925年(大正15年)。▼奈良鉄道が設立されたのはそれよりもずっと以前の1893年(明治26年)である。▼この奈良鉄道の路線は1895年(明治28年)、当時の奈良鉄道伏見駅から市街地を通って桃山駅(現在のJR桃山駅)まで延伸された後、翌1896年(明治29年)には伏見~木津間(現在のJR奈良線)を開業している。

JR桃山駅(2016年9月)
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▼しかし、奈良鉄道は1905年(明治38年)に関西鉄道に譲渡された後、1907年(明治40年)には国有化されてこの路線は国鉄奈良線(現在のJR奈良線)となっている。▼国有化された国鉄奈良線(旧奈良鉄道/現在のJR奈良線)は単線であり、しかも1日に12往復しか運行されず、京都~奈良間の所要時間は1時間30分もかかっていた。

JR奈良線のJR藤森駅~桃山駅間(2018年4月)

▼こうした中、第一次世界大戦における好況期を迎えると鉄道敷設の要望は高まり、これを契機として1919年(大正8年)に奈良電気鉄道が発足した。▼奈良電気鉄道は京阪電気鉄道の中書島駅と大阪電気軌道(現在の近畿日本鉄道)の奈良駅を結ぶ鉄道路線敷設の免許申請を行ったが、この路線は伏見、向島、小倉、大久保、寺田、富野荘、田辺、三山木、狛田、祝園、木津を経由するルートとなっていた。

狛田駅付近を走行する近鉄特急(2020年6月)

▼その一方で、新たに設立された関西電気軌道(現在の近畿日本鉄道)が奈良を起点として、木津、田辺、宇治を経由して七条に到達する鉄道路線敷設の免許申請を行ったため、両社が競合する形となった。▼折りしも第一次世界大戦は終戦して経済情勢が悪化したため、京都府と奈良県の勧めにより協議の上で両社は合併することとなり、関西電気軌道(現在の近畿日本鉄道)は免許申請を取り下げて会社を解散した。

京田辺の馬坂川桜並木(2019年4月)

▼免許を受けた奈良電気鉄道は経済情勢を鑑みて起点と終点を変更し、京阪電気鉄道の宇治駅と大阪電気軌道(現在の近畿日本鉄道)の西大寺駅を結ぶことにした。▼宇治駅では京阪電気鉄道と、西大寺駅では大阪電気軌道(現在の近畿日本鉄道)と乗り入れることに合意した。

京阪宇治駅ホーム(2017年12月)

▼1925年(大正14年)に奈良電気鉄道が正式に創立され、小倉以南の線路敷設工事は順調に進んでいた。▼一方で、宇治における用地買収において計画の変更を余儀なくされ、桃山付近で京阪電気鉄道と接続して三条まで乗り入れる計画としたが、京阪電気鉄道がこれに難色を示すことになった。

京阪線に沿って流れる鴨川(2016年12月)

▼これを受けて奈良電気鉄道は1926年(大正15年)、小倉~伏見間(伏見支線)における鉄道路線敷設を新たに申請し、この工事に着手することになった。▼ところが、宇治川の渡河の方法について、周辺が陸軍の演習地であったため橋脚を設置すると演習の妨げになるという問題が発生したため、橋脚がない橋を設置することになった。

澱川橋梁を渡る近鉄特急(2019年8月)