世界で初めての切符

1.切符の誕生 2.日本のきっぷ

 

ICOCAのぬいぐるみ(2019年6月)


切符の誕生

世界で初めての鉄道が走ったのは1825年のイギリス、すなわちストックトン=ダーリントン鉄道ですが、初めての乗車券が誕生したのもイギリスでした。このときの乗車券は紙製であり、そこに発着駅が印刷されており、発売年月日、発車時刻、発行者のサインは手書きであったといいます。その後、再利用できる金属製円形乗車券が登場したこともありましたが普及することなく、印刷と手書きによる紙製乗車券が使用され続けました。

 

そうした中、ニューカッスル・アンド・カーライル鉄道のミルトン駅長であったトーマス・エドモンソンは1836年、新しいタイプ乗車券のアイデアを考案することになります。その小さな駅では当時、乗車券を発行しておらず、駅長は毎日の売り上げをチェックするのに苦戦していました。そこで、トーマス・エドモンソンは紙に発着駅名と運賃を木版印刷し、そこに通し番号を手書きしました。しばらくすると、日付押印機や乗車券棚、印刷機なども製作し、すべてを印刷するようになりました。ここに、エドモンソン式乗車券が誕生しました。このときの乗車券の大きさが縦3センチ×横5.75センチ、すなわち現在の日本でも使用されている切符のサイズです。

 

縦3センチ×横5.75センチの切符(2017年9月)


日本のきっぷ

一方、日本の切符について見ると、近距離切符は小さいサイズであるのに対し、長距離切符や指定券、特急券などは大きいサイズとなっています。

 

自由席特急券(赤)

 

こうした切符のサイズは縦5.75センチ×縦8.5センチであり、磁気定期券や磁気カードによるプリペイドカードなども同じ大きさです。磁気カードの一つであるオレンジカードはかつて、​JR​各社が発売していたプリペイドカードであり、国鉄時代の1985年(昭和60年)に発売が開始されています。2013年(平成25年)をもって販売を終了しています。ラガールカードは阪急電鉄が1989年(平成元年)に発売を開始したプリペイドカードであり、発売当初は自動改札機自体がこれに非対応のため自動券売機でしか使用できませんでした。1992年(平成4年)以降は自動改札機を通すことができるようになったものの、2017年(平成29年)をもって発売を終了しています。スルっとKANSAIは​、ラガールカード​をベースとして​阪神電気鉄道大阪市交通局北大阪急行電鉄​が拡張対応する形で作られた自動改札機対応カードであり、1996年(平成8年)よりスルっとKANSAIの統一名称としました。2017年(平成29年)にすべての販売を終了しています。

 

磁気定期券(大阪市営地下鉄)

 

また、人気の青春18きっぷのサイズは縦5.75センチ×横12センチとなっています。不思議なことに、長距離切符や指定券、特急券などの縦5.75センチ、青春18きっぷの縦5.75センチという長さは、エドモンソン式乗車券の横5.75センチと同じ長さになっています。青春18きっぷは、JR線の普通列車(快速列車を含む)を1日乗り放題として使用できる5枚綴りの切符であり、春休み・夏休み・冬休みの期間中に発売されています。

 

青春18きっぷの説明文(2017年11月)

 

これらの乗車券は同じ自動券売機から発券されますが、自動券売機の中に幅5.75センチの長いロール紙が収納されており、小さな切符も大きな切符もこれを元に印刷されているため、どの切符も一辺が同じサイズになっています。すなわち、すべて1種類のロール紙で対応できる節約方式となります。駅員の方がみどりの窓口で切符を発券してくれる端末をマルスといいますが、こうしたマルスシステムより発券されるマルス券も同じ大きさになります。

 

自由席特急券(青)

 

私鉄の特急券なども同じ大きさになっています。

 

近鉄特急券

 

近年では、交通系ICカードの普及により電車に乗るために切符を購入したことがない若者も多いといいます。交通系ICカードの大きさはSuica、PASMO、ICOCAなどすべて同じであり、縦5.398センチ×横8.56センチとなっています。manaca(マナカ)はエムアイシーと名古屋交通開発機構が発行するICカードであり、名古屋鉄道、名鉄バス、名古屋市交通局、名古屋臨海高速鉄道、豊橋鉄道、愛知高速交通、名古屋ガイドウェイバスで使用することができます。

 

無記名式manaca(2018年3月)

 

交通系ICカードは長距離切符や指定券、特急券などと同じ大きさのように感じますが、若干異なります。交通系ICカードは身分証明書カードの国際規格の一つに基づいているといいます。