本当の「日本最古の駅」

1.新橋駅 2.横浜駅 3.日本最古の駅「品川駅」

 

品川駅駅名標(2018年9月)


新橋駅

1872年(明治5年)10月14日、日本初の鉄道「新橋~横浜」間が開通しました。ここにいう「新橋駅(初代)」は現存する「新橋駅(2代)」ではありません。すなわち、1872年(明治5年)に敷設された新橋~横浜間の起点となった新橋駅(初代)は「初代新橋駅」をさし、このときの新橋駅(初代)は後に「汐留駅」となっています。汐留駅は貨物駅となった後、1986年(昭和61年)に廃止されています。

 

開業当時の新橋駅(初代)駅舎は西洋建築の駅舎であり、リチャード・ブリジェンスにより設計されたものです。新橋駅(初代)は長らくの間、ターミナル駅として発展しましたが、1914年(大正3年)に東京駅が完成するとその機能は東京駅へと移っていくことになります。

 

新橋駅前に保存されるC11形(2018年9月)

 

一方、現在の新橋駅(2代)はもともと「烏森駅」として開業しています。烏森駅は1909年(明治42年)に旅客駅として仮本屋で営業を開始し、1914年(大正3年)に本屋が完成し、烏森駅が「新橋駅(2代)」と改称されました。新橋駅(2代)は東京都港区にあり、JR線、東京メトロ銀座線、都営地下鉄浅草線、ゆりかもめが乗り入れています。このうち、JR線について見ると、線路名称上は東海道本線1路線のみの乗り入れとなりますが、運転系統上では東海道線京浜東北線山手線、横須賀線が乗り入れていることになります。

 

現在の新橋駅(2代)の西口広場はSL広場ともよばれますが、その名前の由来となるのが鉄道100年を記念して駅前に保存される蒸気機関車C11-292です。C11-292は1945年(昭和20年)に日本車輛により完成し、山陽本線へと配属され、播但線や姫新線などで活躍しました。したがって、C11-292は新橋駅(2代)前にありながらこの周辺では走っていなかったということになります。C11形はタンク式とよばれる小型の蒸気機関車であり、主に近距離路線や貨車の入れ替えなどに使用されていました。

 

蒸気機関車C11-292の前面(2018年9月)

 

もともと「新橋」という地名は外堀(後の汐留川)に架かっていた東海道の橋に由来する名称です。1710年(宝永7年)にこの地に芝口御門が造られたことにより、新橋は芝口御門橋と名称を変更されることになりました。しかし、1724年(享保9年)に芝口御門が消失してしまったものの再建されず、旧称の「新橋」に戻されています。

 

蒸気機関車C11-292の後ろ姿(2018年9月)


横浜駅

一方、新橋~横浜間の終点となった横浜駅(初代)は現在の横浜駅ではありません。横浜駅(初代)はリチャード・ブリジェンスにより新橋駅(初代)駅舎と同じデザインで建築されました。リチャード・ブリジェンスはバーミンガム(イギリス)生まれであり、1864年(元治元年)に来日し横浜で土木建築事務所を開いています。また、日本初の鉄道の開業に先立ち、高島嘉右衛門(たかしまかえもん)は1870年(明治3年)、大隈重信らに京浜間の鉄道敷設を進言しています。高島嘉右衛門は高島易断の開祖ですが、明治時代​に横浜の発展に寄与し「横浜の父」ともよばれています。

 

ちなみに、横浜駅(初代)は、1915年(大正4年)に横浜駅(2代)が誕生した際に「桜木町駅」と改称されています。したがって、現在の新橋駅(初代)も横浜駅(初代)も、厳密にいうと新橋~横浜間が開業した当時の駅ではないということになります。


日本最古の駅「品川駅」

1872年(明治5年)10月14日に新橋(後の汐留駅)~横浜(現在の桜木町駅)間の開通式が行われ、翌10月15日より正式に営業運転が開始されました。しかし、厳密にいうと日本最初の鉄道が走ったのはこのときではありません。なぜなら、これに先立って6月12日に品川~横浜(現在の桜木町駅)間が仮開業しています。したがって、「鉄道開通の話」をするたびに取りあげられる新橋駅(後の汐留駅)よりも先に品川駅は開業していたことになるので、品川駅は「わが国最古の駅」ということになります。

 

品川駅駅名標(2018年11月)

 

鉄道の路線にはその起点からの距離を表す距離標が設置されていますが、これは「キロメートル」の単位によって表示されるため「キロポスト」と称されることもあります。キロポストの起点を表す標識は「ゼロキロポスト」とよばれます。品川駅には「ゼロキロポスト」がありますが、東海道本線のものではありません。日本初の鉄道の起点として「ゼロキロポスト」(当時はマイルで計測されたので「ゼロマイルポスト」)が設置されたのは新橋駅であり、これは1958年(昭和33年)に鉄道記念物に指定されています。

 

さて、現在の品川駅にある「ゼロキロポスト」ですが、これは山手線のものであり、品川駅は山手線の起点であるということです。山手線は環状運転をしているので起点や終点といわれると不思議に感じますが、山手線の起点は品川駅、終点は田端駅となっています。すなわち、路線名称としては品川~新宿~田端間が山手線、田端~東京間が東北本線東京~品川間が東海道本線となります。

 

山手線の車両E235系(2020年10月)

 

品川駅のホームには品川駅開業130周年安全祈念碑があり、品川駅開業130年の際に鉄道安全を祈願(品川駅開業130周年安全祈念碑)して設置されたものです。この安全祈念碑は古い電気機関車の動輪とレールからできています。また、祈念碑上部には鐘が取り付けられていますが、これは動輪よりあとの時代に取り付けられたものです。

 

ホームにある安全記念碑(2018年8月)

安全祈念碑上部に取り付けられる鐘(2018年8月)