横川駅「峠の釜めし」とアプト式鉄道

1.横川駅と峠の釜めし 2.アプト式鉄道

 

横川駅(2019年12月)


横川駅と峠の釜めし

北陸新幹線の高崎~長野間が開業した1997年(平成9年)、途中駅であった横川駅は信越本線の終着駅となりました。

 

横川駅に掲示されるJR線の運賃表(2019年12月)

 

それまではここから碓氷峠を越えて軽井沢駅へと線路がつながっていました。

 

軽井沢駅(2019年12月)

 

碓氷峠には66.7パーミルとなる国鉄では最も急な勾配があり、横川駅ではこの急勾配を上り下りするために、すべての列車に電気機関車EF63形の連結・切り離しを行っていました。

 

終着駅となる横川駅(2019年12月)

 

したがって、横川駅ではすべての列車が長時間停車することになり、その時間を利用して多くの乗客が「峠の釜めし」を購入していました。

 

「峠の釜めし」を製造販売する駅前の荻野屋(2019年12月)

 

横川駅は、相対式ホーム2面2線と中線1線をもつ構造となっています。

 

横川駅ホーム(2019年12月)

 

以前は単式ホームと島式ホームがあり、側線も多数ある広大な駅であったが、現在ではほとんどが撤去されています。

 

現在も残る廃止となった線路(2019年12月)

 

構内には横川運転区もありましたが、現在はこれも廃止されて碓氷峠鉄道文化むらとなっています。

 

現在も残る廃止となった線路(2019年12月)

 

横川駅は1885年(明治18年)に官設鉄道の高崎~横川間が開通すると同時に開業しました。

 

高崎駅(2019年12月)


アプト式鉄道

通常の鉄道であれば急勾配があると車輪が滑ってしまうので電車が坂を登りきれません。車輪とレールの粘着度が高ければ、すなわち摩擦力が大きければ、より急勾配であっても電車は進むことができます。こうした急勾配において、摩擦力をいくら大きくしても坂を登ることができないという場合に、ラック式鉄道が採用されることがあります。ラック式鉄道とは2本のレールの中央に、3本目の歯形のついたレール(ラックレール)を設置して、車両の底に取り付けられた歯車とラックレールを噛み合わせることにより、急勾配を上ったり下ったりする鉄道であり、山岳鉄道などによく見られます。ラック式鉄道はその歯の形状や向きなどにより、アプト式、リッケンバッハ式、シュトルプ式、ロッヒャー式、フォンロール式の5種類に分類できます。

 

信越本線を走る列車(2019年12月)

 

アプト式鉄道はラック式鉄道の種類の一つであり、カール・ローマン・アプトがその発明者であるためアプト式と名付けられました。現在、日本でアプト式が採用されているのは大井川鐡道井川線(愛称「南アルプスあぷとライン」)のみです。この井川線には90パーミルという日本で最も急な勾配があります。ちなみに、通常の鉄道で最も急な勾配を登るのは箱根登山鉄道です。

 

信越本線を走る211系(2019年12月)

 

1888年(明治21年)になると、ここから軽井沢駅まで碓氷馬車鉄道が開通し、19.1キロを約2時間半で結んだといいます。1893年(明治26年)にアプト式を採用した官設鉄道が横川~軽井沢間を開業すると、碓氷馬車鉄道は廃止となりました。1912年(明治45年)にこの区間は電化され、1963年(昭和38年)にはアプト式は廃止され、粘着式による通常の鉄道となりました。なお、横川駅は1997年(平成9年)に関東の駅百選に選定されています。