超特急「燕」の誕生と蒸気機関車「シロクニ」

1.超特急「燕」 2.C62形蒸気機関車 3.列車名「つばめ」

 

京都鉄道博物館に展示される「つばめ」ヘッドマーク(2019年1月)


超特急「燕」

後に日本鉄道史に刻まれることとなった蒸気機関車の超特急「燕」東京神戸間を初めて走行したのは1930年(昭和5年)のことでした。

 

京都鉄道博物館に展示される「つばめ」ヘッドマーク(2019年1月)

 

当時、東京~下関間には「富士」「櫻」という特急列車が走っていましたが、超特急「燕」3番目の特急として誕生しました。

 

京都鉄道博物館に展示される「つばめ」ヘッドマーク(2019年1月)

 

そのころの超特急「燕」東京神戸間の所要時間は8時間56分もかかっていましたが、当時はまさに「超特急」という名にふさわしく東海道を疾走して国民の羨望の的となりました。また、超特急「燕」は所要時間のうち、その給水時間を節約するために水タンク車を連結していました。


C62形蒸気機関車

戦時中には貨物輸送が増大したためD型機関車が大量に製造されましたが、戦争が終わると貨物輸送が激減して多くのD型機関車が余ることになりました。その一方で旅客輸送が増大したので、これに対応するためにD型機関車のボイラーを流用して旅客用のC型機関車の製造をはじめました。C62形蒸気機関車は日本史上最大かつ最強の旅客用テンダー式蒸気機関車であり、1948年(昭和23年)~1949年(昭和24年)にかけて49両が製造されました。

 

京都鉄道博物館の入口付近に展示されるC62-26(2019年1月)

 

C62形蒸気機関車はボイラー中心が高いために煙突やドームの高さがかなり低くなり、独特の力強い外観となっています。通称「シロクニ」(C62)とよばれたC62形蒸気機関車は戦後の代表的な蒸気機関車であり、まさに大型高速旅客用蒸気機関車として絶大な人気を誇りました。

 

京都鉄道博物館の入口付近に展示されるC62-26(2019年1月)

 

日本史上最大最強となる1620馬力を誇るC62形蒸気機関車は、旅客用蒸気機関車として特急列車の先頭に立ちました。東海道本線山陽本線においては「つばめ」「はと」「あさかぜ」の牽引機として大いに活躍しましたが、幹線が電化されるとともに、その黒い大きな車体は地方へと追われるようになりました。そして、ついに1973年(昭和48年)、函館本線の普通列車牽引を最後の雄姿として惜しまれながら引退しました。

 

京都鉄道博物館にてSLスチーム号の牽引車となるC62-2(2019年1月)


列車名「つばめ」

「つばめ」という名は国鉄のおいては特別な列車名です。「つばめ」という名が初めて使用されたのは1930年(昭和5年)の超特急「燕」ですが、戦争の激化により1943年(昭和18年)に一時廃止となっています。

 

京都鉄道博物館の入口付近に展示されるC62-26(2019年1月)

 

そして、1949年(昭和24年)に東京大阪間で戦後初の国鉄特急「へいわ」が運行を開始しますが、翌年にその列車名を「つばめ」と改称しています。このときの所要時間は9時間であり、東京大阪間の戦前の「つばめ」自らの記録であった8時間には及んでいません。

 

京都鉄道博物館「へいわ」ヘッドマーク(2019年1月)

 

「国鉄」と「つばめ」という言葉を聞くと「国鉄スワローズ」を想起される方もいるかと思います。現存するプロ野球チーム「東京ヤクルトスワローズ」は1950年(昭和25年)に創設された球団であり、明治神宮野球場をその本拠地としています。創立された1950年(昭和25年)当時の球団名は国鉄スワローズでした。しかしながら、そのオーナーが国鉄であったというわけではなく、国鉄の外郭団体であった交通協力会がその主体となって株式会社を設立し、その球団名を国鉄スワローズとしたものです。

 

その後電化が進み、80系(湘南電車)、90系(後の101系)が投入されました。「こだま」(20系/後の151系)が登場するようになると、「つばめ」を電車化する声が高まります。そして、ついに1960年(昭和35年)に「つばめ」は151系となりました。「こだま」と同じ151系となった「つばめ」ですが、その格式と伝統を守るために展望車や全室食堂車を連結するようになります。

 

東海道新幹線が開業すると、1964年(昭和39年)には「つばめの運転区間新大阪~博多間に変更され、最終的には岡山~博多・熊本・西鹿児島(現在の鹿児島中央)間へと変更されて山陽・九州特急という役割へと変化していきます。しかし、1975年(昭和50年)にはその役割を終え、国鉄の歴史から「つばめ」の名は姿を消しました。

 

京都鉄道博物館「日本国有鉄道」略称ロゴマーク(2019年1月)

 

国鉄分割民営化後の1992年(平成4年)、「つばめ」は787系となって門司港・博多・熊本~西鹿児島(現在の鹿児島中央)間に復活します。さらに、2004年(平成16年)に九州新幹線の新八代~鹿児島中央間が先行開業すると、「つばめ」は新幹線の列車名として採用されています。