寝台特急「トワイライトエクスプレス」の誕生から引退まで

投稿者: | 2018-11-18

1.トワイライトエクスプレスの誕生と引退 2.トワイライトエクスプレスの牽引車 3.トワイライトエクスプレスの客車 4.トワイライトエクスプレスの編成 5.新しいトワイライトエクスプレス「瑞風」

 

トワイライトエクスプレスを牽引していた機関車EF81形(2019年1月)


トワイライトエクスプレスの誕生と引退

「トワイライトエクスプレス」という列車名は、発車する日の夕方と翌日の明け方における日本海の眺望を楽しむというところに由来します。JR西日本とJR北海道大阪~札幌間において共同で運行し、その走行距離は1,500キロにも及んでおり、運行当時は日本一長距離を走る寝台特急となっていました。

 

トワイライトエクスプレスのエンブレム(2019年1月)

 

トワイライトエクスプレスは、東海道本線、湖西線北陸本線、信越本線、羽越本線、奥羽本線、津軽線、海峡線、江差線、函館本線、室蘭本線、千歳線経由の運行ルートとなります。このうち、函館本線では七飯(ななえ)~大沼間、大沼~森間の2区間でそれぞれ線路が2線に分岐します。下りが藤城線(七飯~大沼)、駒ヶ岳回り(大沼→大沼公園→赤井川→駒ヶ岳→東山→姫川→森)経由、上りが砂原回り(森→東森→尾白内→掛澗→渡島砂原→渡島沼尻→鹿部→銚子口→流山温泉→池田園→大沼)経由となっていました。たとえば、下り列車の場合、大阪を出発した後、新大阪京都敦賀、福井、金沢、高岡、富山、直江津、長岡、新津、洞爺、東室蘭、登別、苫小牧、南千歳、札幌の順に停車します。

 

京都鉄道博物館に展示されるトワイライトエクスプレス(2019年1月)

 

トワイライトエクスプレスは2015年(平成27年)にその役割を終えます。その後、期間限定で全客室スイート・ロイヤルの「特別なトワイライトエクスプレス」として運行されてきましたが、2016年(平成28年)をもって完全に引退しました。

 

京都鉄道博物館に展示されるトワイライトエクスプレスの車両(2019年1月)

 

大阪~札幌間を結ぶ寝台特急「トワイライトエクスプレス」がデビューしたのは1989年(平成元年)のことでした。青函トンネルが開通した翌年7月に1編成が投入されましたが、団体専用の臨時列車であったため時刻表には掲載されていませんでした。この1編成により、火曜日・金曜日は大阪発、水曜日・土曜日は札幌発の週2回往復となっていました。同年12月になると、もう1編成が投入されることとなり、週4回往復の臨時特急列車へと変更されて時刻表にも掲載されることになりました。さらに、2年後には3編成目が投入され、その完全引退まで臨時特急列車として運行し続けました。


トワイライトエクスプレスの牽引車

大阪~青森間において、トワイライトエクスプレスの客車を牽引していたのがEF81形交直流電気機関車です。この機関車はトワイライトエクスプレスカラーに塗装されており、異なる3種類の電力に対応するようにできています。

 

トワイライトエクスプレスの牽引機関車EF81(2019年1月)

 

大阪敦賀間の直流1500ボルト、敦賀~糸魚川間の交流2万ボルト(50ヘルツ)、糸魚川~村上間の直流1500ボルト、村上~青森信号場間の交流2万ボルト(50ヘルツ)にそれぞれ対応し、直流の区間では2,550キロワット、交流の区間では2,370キロワットの力を発揮します。また、青森~五稜郭間においてはED79形交流電気機関車、五稜郭~札幌間はDD51形ディーゼル機関車にそれぞれ牽引車は交替していました。


トワイライトエクスプレスの客車

トワイライトエクスプレスの客車は寝台特急の主力である24系客車が使用されていましたが、トワイライトエクスプレスの客車内は大幅な改造が加えられていました。個室寝台が付いている客車はその台車以外はほとんどといってもよいほど改造が加えられています。

 

吹田総合車両所で公開された24系客車(2016年10月)
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24系客車は1973年(昭和48年)に登場しています。動力装置は付属しておらず、機関車に牽引される形で運行されます。車内で必要となる電力については電源車から供給されるため、牽引する機関車に電源装置が付属してなくても問題ありません。

 

吹田総合車両所で公開された24系客車(2016年10月)

 

24系客車は元来、揺れの少ない設計となっている他、制動力も優れていることからどのような機関車が牽引しても安定した走行を実現できるとされています。

 

吹田総合車両所で公開された24系客車(2016年10月)
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厳しい冬の北海道に乗り入れる場合に備えて、車両は通常に比べて断熱材を増やしている他、暖房を強力にし、扉は元来の折れ戸から凍結しにくい引き戸に変更しています。また、外部の塗装についても、24系客車はもともとの青色塗装から、緑色に黄色の帯を施したものに変更しており、いわゆる「ブルートレイン」とは一線を画す車両となっています。

 

吹田総合車両所で公開された24系客車(2016年10月)
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その深い緑色は日本海をイメージしたもの、黄色はトワイライトを表したものとなっています。そして、その贅沢な車内設備はトワイライトエクスプレスの最大の魅力となっていました。

 

吹田総合車両所で公開された24系客車(2016年10月)
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トワイライトエクスプレスの編成

トワイライトエクスプレスの編成は、

 

1号車:スロネフ25形=A個室(スイートルーム・ロイヤルルーム)
2号車:スロネ25形=A個室(スイートルーム・ロイヤルルーム)
3号車:スシ24形=食堂車「ダイナープレヤデス」
4号車:オハ25形=サロンカー「サロン・デュ・ノール」(自販機・シャワー室・電話)
5号車:オハネ25形=B個室(ツインルーム・シングルツイン)
6号車:オハネ25形=B個室(ツインルーム・シングルツイン)
7号車:オハネ25形=B個室(ツインルーム)・ミニサロン(自販機・電話)
8号車:オハネ25形=Bコンパートメント
9号車:オハネフ25形=Bコンパートメント
電源車:カニ24形=電源用発電機・荷物室

 

のようになっています。トワイライトエクスプレスの特徴といえば「個室」であり、「鉄道の旅を満喫する」をコンセプトとしています。1号車・2号車と5号車~9号車までの「個室」によりプライベート空間を演出し、3号車の食堂車では豪華な食事を提供する、そして4号車のサロンでは気軽にくつろぐことができるように工夫されており、その編成は絶妙なものとなっています。

 

A個室(2019年1月)

 

1号車となる「スロネフ25形501号車」は1976年(昭和51年)に富士重工業で製造された車両であり、全長21.30メートル、重量41.0トンとなっています。1989年(平成元年)に改造され、トワイライトエクスプレスにおいては最も豪華な設備をもつ車両となりました。

 

京都鉄道博物館に展示されるスロネフ25形(2019年1月)

 

車両の一角から景色を占有できるスイートルームや大型のベッド、ソファが設置されたロイヤルルームが設置されています。この1両に5部屋しかなく、定員はわずか6人でした。

 

京都鉄道博物館に展示されるスロネフ25形(2019年1月)

 

食堂車となる「スシ24形1号車」は1972年(昭和47年)に近畿車輌で製造された車両であり、全長は20.50メートル、重量38.5トンとなっています。特急型交直流電車の食堂車サシ489形3号車を1988年(昭和63年)に改造し、トワイライトエクスプレスにおいては食堂車「ダイナープレヤデス」として使用されました。その内装にはステンドグラス、電動シェード、絨毯などが施され、高級感のある車内ではフランス料理を食べることができました。

 

京都鉄道博物館に展示されるスシ24形(2019年1月)


新しいトワイライトエクスプレス「瑞風」

トワイライトエクスプレスの車窓の風景をはじめとするその伝統と誇りは、2017年(平成29年)より「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」に引き継がれました。「瑞風」という列車名は、みずみずしい風、吉兆をあらわすおめでたい風という意味をもつ言葉から、稲穂が豊かに実る「瑞穂の国」に幸せを運んでくる風をイメージしています。

 

京都駅0番線のりばに掲示される瑞風の案内(2017年6月)

 

瑞風は10両編成となっていますが、その定員はわずか30名ほどです。1両あたり1室しかない最上級の個室もあり、以前の「トワイライトエクスプレス」よりも贅沢な旅となります。

 

京都駅の足元案内表示(2017年6月)