古都「平城京」と世界遺産をめぐる奈良交通バス

西ノ京駅(2017年6月)


奈良交通バス

奈良交通は奈良県の路線バスなどを運営しているバス会社です。奈良県内の路線バスのほぼすべてを網羅する他、京都や大阪、和歌山などへも一部のバスを運行しています。

奈良~新宮間特急バス開通20周年記念乗車券

【奈良交通と奈良県内のバス路線史】

奈良県の乗合バスのはじまりは1917年(大正6年)、松山自動車商会が松山(大宇陀)~桜井間で運行を開始したことによります。このとき、関西鉄道桜井駅から山間の地域がバス路線で結ばれています。

奈良定期観光バス50周年記念乗車券

その後、大阪電気軌道(大軌)奈良電気鉄道吉野鉄道大和鉄道などの鉄道路線が続々と開業し、明司自動車は畝傍~橿原神宮間、南和自動車は五条~下山口間など多くのバス路線が開業しました。こうして鉄道駅と山間の地域が次々とバス路線で結ばれていくことになりますが、奈良市内のバス路線の開業はこれよりも遅れて1928年(昭和3年)に奈良市街自動車が奈良~春日大社間を結んだのがはじまりとなります。

唐招提寺へ向かうバス(2017年6月)

春日山は春日大社の東側にある花山(はなやま)と御蓋山(みかさやま)をさしますが、この山々は古くから人々に崇敬されてきました。花山は春日奥山ともよばれ、明治時代にはこれへの周遊路が開かれていました。奈良県がこれを整備して自動車を通行できるようにしたことを受けて、大阪電気軌道(大軌)春日奥山周遊バス「お一人でも乗っていただける名所巡り定期観光バス」の運行を開始し、奈良定期観光バスのはじまりとなります。1929年(昭和4年)に運行を開始したこの定期観光バスは、現在における観光地周遊バスの原型となりました。

奈良定期観光バス50周年記念乗車券

その後もバス路線は順調に拡大し、1933年(昭和8年)には28社が路線バスを運行するようになりました。このようなバス会社の乱立は淘汰を招くことになり、1936年(昭和11年)には大阪電気軌道(大軌)の傘下に入った奈良自動車へと多くのバス会社が集約されていくことになります。

奈良~新宮間特急バス開通20周年記念乗車券

日中戦争が勃発して戦時体制となると、さらにバス会社の整理統合がすすめられ、県北部は奈良自動車、県南部は関西急行鉄道(関急)の傘下となった吉野宇陀交通へと統合されていきます。1943年(昭和18年)になると、奈良自動車が残っていた他社4社を統合して奈良交通が発足することになりました。

奈良~新宮間特急バス開通20周年記念乗車券

奈良交通は奈良県のバス路線を一手に引き受ける巨大なバス会社となっていましたが、戦時中および戦後すぐにはバス路線の運営に苦戦を強いられることになります。経営努力を積み重ねて、1947年(昭和22年)に春日奥山周遊バスを復活させて、路線バスだけではなく定期観光バスの復興も実現していきました。

奈良~新宮間特急バス開通20周年記念乗車券

1961年(昭和36年)にはすべての車両が大型ディーゼルバスとなり、1963年(昭和38年)には奈良~新宮間の特急バスの運行を開始しています。

奈良~新宮間特急バス開通20周年記念乗車券

奈良交通は2007年(平成19年)、近鉄バス、奈良観光バスと合わせて近畿日本鉄道が設立したけいはんなバスホールディングス(現在の近鉄バスホールディングス)の傘下となりました。


奈良世界遺産フリーきっぷ

近畿日本鉄道が発売するお得なきっぷには「奈良世界遺産フリーきっぷ」というのがあります。

大阪または京都から奈良フリー区間までの往きの切符(2017年6月)

このフリーきっぷには指定した当日限り有効の奈良・斑鳩(いかるが)1日コースと2日間有効の奈良・斑鳩2日コースの2種類があります。

大阪または京都から奈良フリー区間までの往きの切符(2017年6月)

いずれも近鉄電車の発駅からフリー区間までの往復乗車券およびフリー区間の乗車券、奈良交通バスの奈良・斑鳩エリア内の乗り放題乗車券、奈良・斑鳩エリアの施設で利用できる割引特典が付いています。

奈良交通バスのフリー乗車券(2017年6月)

観光施設割引券(2017年6月)

奈良交通バスのフリー乗車券を提示すると指定区間の奈良交通バスが自由に乗り降りできます。指定区間は奈良公園・西の京・法隆寺地区となりますが、フリーきっぷを購入した際にもらった路線図でそのエリアを確認することができます。

奈良交通バス路線図(2017年6月)


唐招提寺

世界遺産「古都奈良の文化財」は奈良市内にある8件の遺産(東大寺・興福寺・春日大社・春日山原始林・元興寺・薬師寺唐招提寺平城宮跡)からなります。

【平城京】

平城京は奈良時代の都であり、唐の長安などを模倣して建造されたとされています。この平城京を中心として律令国家としてのしくみが完成し、天平文化が花開きました。平城京跡は近鉄奈良線の大和西大寺駅と新大宮駅の間にあり、国営平城宮跡歴史公園近鉄奈良線が横切ります。

近鉄電車から見た平城京跡(2017年6月)

このうちの1つである唐招提寺へも奈良交通バスのフリーきっぷを使って行くことができます。

唐招提寺東口バス停を出発し唐招提寺バス停へ向かうバス(2017年6月)

唐招提寺へは唐招提寺東口、唐招提寺などのバス停で下車すればアクセスできます。

 北行きの唐招提寺東口バス停(2017年6月)

また、近鉄橿原線西ノ京駅からもアクセス可能です。

【西ノ京駅】

西ノ京駅は1921年(大正10年)、大阪電気軌道畝傍線(現在の近鉄橿原線)の駅として開業しました。

西ノ京駅(2017年6月)

その後、鉄道会社の統合などにより、関西急行鉄道近畿日本鉄道の駅となっています。

西ノ京駅(2017年6月)

西ノ京駅は、世界遺産「古都奈良の文化財」となる唐招提寺薬師寺の最寄り駅となっているため、現在では急行や特急の一部も停車するようになっています。

西ノ京駅(2017年6月)

唐招提寺東口バス停で下車したら少し南へもどり、信号を右(西)へ曲がって秋篠川を越えると唐招提寺です。

秋篠川(2017年6月)

唐招提寺は南都六宗の一つである律宗の総本山です。

唐招提寺(2017年6月)

南都六宗とは奈良時代の平城京を中心として栄えた奈良仏教のことであり、三論(さんろん)宗、成実(じょうじつ)宗、法相(ほっそう)宗、倶舎(くしゃ)宗、律宗、華厳宗の6つをいいます。

唐招提寺(2017年6月)

律宗は中国で広まった仏教の一つであり、わが国へは754年(天平勝宝6年)に僧・鑑真が伝えた宗派です。

唐招提寺(2017年6月)

鑑真は苦難の末、日本へ到着して東大寺で過ごした後、土地を下賜されて759年(天平宝字3年)に唐招提寺を建立し、その晩年をこの寺で過ごしました。

唐招提寺(2017年6月)


薬師寺

薬師寺へも奈良交通バスの薬師寺駐車場や薬師寺東口などの停留所から、また西ノ京駅からもアクセスできます。

西ノ京駅前ロータリー(2017年6月)

薬師寺法相宗の大本山であり、平城京遷都の際に飛鳥から現在の場所へと移されました。

薬師寺(2017年6月)

もとは680年(天武天皇9年)に天武天皇の発願によって藤原京の地に造営が開始されたものです。

薬師寺(2017年6月)