小説『阪急電車』に見える今津線

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阪急電車オリジナルグッズ(2018年7月)


小説『阪急電車』に見える今津線

有川浩さんの小説『阪急電車』は、阪急電鉄の各線の中でも全国的にはあまり知られていない今津線を描いた小説です。今津線を利用する登場人物たちが、それぞれの人生の中で出会う小さな出来事について詳細に描かれていて、ホッとするような、甘酸っぱいような小説です。

 

書籍名:『阪急電車』
著者名:有川浩
出版社:幻冬舎
発行日:2008年(平成20年)1月25日

 

小説『阪急電車』の主役である今津線の起点は宝塚駅、終点は今津駅です。この起点となる宝塚駅について、小説の本文では、

清荒神駅から宝塚駅へ向かう電車の同じ先頭車両に彼女は乗ってきた。
……(略)……
終点の宝塚駅では選択肢が三つある。そのまま降りる、JRに乗り換え、同じ構内の『人』の字のもう片方の出発点である西宮北口駅(通称西北)行きに乗り換え。

と書かれています。

 

阪急電車オリジナルグッズ(2018年7月)

 

宝塚本線の起点は梅田駅、終点は宝塚駅ですが、本文中にある清荒神(きよしこうじん)駅は終点宝塚駅の一つ手前の駅です。したがって、本文中の「彼女」は終点の一つ手前の清荒神駅からその電車に乗り込んできたということになります。そして、終点の宝塚駅に着くと「選択肢が三つある」ということになります。「そのまま降りる」は別として、「JRに乗り換え」とは阪急宝塚駅はJR宝塚駅と接しているため、JR福知山線に乗り換えができるという意味になります。

 

神戸線から今津南線へ入る短絡線(2018年7月)

 

ただ、ここで一つの疑問が生まれます。「同じ構内の『人』の字のもう片方の出発点である西宮北口駅(通称西北)行きに乗り換え」についてですが、これは「今津線に乗り換える」ということを意味しています。今津線のもう一つの終端は今津駅であるにもかかわらず、小説では西宮北口駅をもう片方の出発点としています。小説の別の部分には、西宮北口駅について次のような記述があります。

 

今津線は乗りっぱなしでは全線を利用できず、西宮北口で分断された同路線を二階コンコースで渡って利用するというちょっと変わった形式になっている。西宮北口から向こう側は二駅で、圭一は利用したことがない。

 

また、別の部分には次のような記述も見られます。

 

西宮北口は阪急電車の中でもそれなりに大きなジャンクションである。
三宮(神戸)行きと梅田(大阪)行きのホームが東西に並び、今津線のシッポともいえる今津行きのホームが南。北側の宝塚行きのホームを加えると全部で四つのホームがあり、乗客たちは二階のコンコースに上がってそれぞれに目的のホームを選んで下り、また、この駅が目的地ならそのまま改札口を出ていく。

 

阪急電車オリジナルグッズ(2018年7月)

 

つまり、今津線は宝塚~今津間を結ぶ路線でありながら、たとえば宝塚駅から今津駅まで行こうとしても「乗りっぱなし」で行くことはできず、一度、途中の西宮北口駅で乗り換えなければならないということになります。したがって、小説には次のような記述も見られます。

 

「西北にも無印とかあるやん」
友達の一人が挙げたのは正式名称『西宮北口』、この電車の走っている今津線の取り敢えずの終着駅である。

 

宝塚からやって来ると「今津線の取り敢えずの終着駅」である「西北(にしきた)」こと西宮北口駅で乗り換え、終点の今津へ行くことになります。

 

「悪いとかじゃないんですよ。全然。私が親戚に下宿させてもらってる阪神国道なんかJR線も近くて便利だし、終点の今津まで行けば阪神にも乗り換え利くし。」


今津南線

西宮北口~阪神国道~今津を今津南線、西宮北口~宝塚間を今津北線とよぶこともあります。

 

神戸線から今津南線へ入る短絡線(2018年7月)

 

神戸線から今津南線へと続く短絡線の踏切には「球場前」「球場前踏切道」という名標が見られます。


西宮球場

以前、西宮北口駅前には「西宮球場」こと阪急西宮スタジアムがありました。2005年(平成17年)には球場の解体工事が完了しているものの、今でも踏切の名標にはその名残が見ることができます。2008年(平成20年)には球場跡地に大型商業施設「阪急西宮ガーデンズ」が開業しています。

 

神戸線から今津南線へ入る短絡線(2018年7月)

 

西宮球場といえば、阪急電鉄が所有していたプロ野球「阪急ブレーブス」の本拠地でした。1975年(昭和50年)には上田利治監督が日本シリーズで広島東洋カープを破り、初めての日本一を達成しています。阪急ブレーブスは数々の名選手を生み出していますが、この初めての日本一の年には、投手陣では山口高志と山田久志、野手陣では加藤秀司、福本豊、長池徳二、大橋穣、外国人ではマルカーノ、ウイリアムスらが活躍しました。


阪急電車オリジナルグッズ

西宮北口駅改札内(カリヨン広場付近)において2018年夏、阪急電車オリジナルグッズの販売が行われ、多くの人たちが訪れていました。

 

阪急電車オリジナルグッズ(2018年7月)