備前焼のふるさとと伊部駅周辺の風景

1.備前焼について 2.伊部駅その周辺の風景 3.備前焼のふるさと

 

伊部地区の町並み(2018年4月)


備前焼について

備前焼は岡山県備前市を中心とする地域をその産地とする焼き物であり、「伊部(いんべ)焼」との異名をとります。

 

伊部地区の町並み(2018年4月)

 

備前焼は良質の土で一点ずつ成形した後、これを乾燥させます。

 

伊部地区の町並み(2018年4月)

 

備前焼は絵付けをせず、釉薬(ゆうやく)を使用しないでそのまま焼きます。釉薬は「うわぐすり」ともいいます。素焼きした後、釉薬を塗った上で本焼きをすると釉薬が溶けて、陶磁器の表面がガラスの層で覆われます。釉薬は陶磁器をより丈夫にし、汚れを吸収しにくくします。また、さまざまな色やデザインを表現することができます。

 

町の中にある備前焼(2018年4月)

 

備前焼の他、信楽焼、越前焼、常滑焼、萬古焼などは釉薬を使用していません。


伊部駅とその周辺の風景

伊部(いんべ)駅は岡山県備前市にある駅であり、1958年(昭和33年)に赤穂線が日生駅から伊部駅まで延伸されたときに当時の終着駅として開業しています。

 

伊部駅駅名標(2018年4月)

 

現在の駅の構造は相対式2面2線をもつ地上駅となっており、上り線ホームと下り線ホームは跨線橋により結ばれています。

 

伊部駅ホーム(2018年4月)

 

開業当初の駅の構造は下りが島式ホームとなっており、2面3線をもつ地上駅でした。

 

伊部駅を出発する赤穂線の車両(2018年4月)

 

現在は、島式ホームとなっていた南側の1線が撤去され、南口が完成した際に自転車置き場および南口への連絡通路となりました。

 

岡山方面行きホームから見た伊部駅南口(2018年4月)

 

北側には備前焼伝統産業会館の建物がありますが、この建物の1階は駅のホームと接続されており、改札口を出るとカフェ、お土産品売り場、観光情報センターなどがあります。

 

伊部駅駅舎(2018年4月)

 

カフェでは備前焼のコーヒーカップでおいしいコーヒーを飲むことができました。

 

伊部地区の町並み(2018年4月)

 

2階には備前焼作家のギャラリーとなっていて、備前焼の作品が展示・販売されています。

 

伊部駅営業管理室(2018年4月)

 

備前市は岡山県南東部にある市であり、備前焼のふるさととなる伊部地区は旧伊部町だった地区です。

 

伊部地区の町並み(2018年4月)

 

伊部町は1951年(昭和26年)に片上町と合併して備前町となり、1971年(昭和46年)に備前町と三石町が合併して備前市となり、最終的に2005年(平成17年)に備前市が日生町、吉永町と合併して現在の備前市が誕生しました。

 

伊部地区の町並み(2018年4月)

 

備前市には山陽本線の三石(みついし)駅、吉永駅、赤穂線の寒河(そうご)駅、日生(ひなせ)駅、伊里(いり)駅、備前片上(びぜんかたかみ)駅、西片上駅、伊部駅、香登(かがと)駅があります。また、かつては同和鉱業が運行していた片上鉄道が片上~柵原(やなはら)間を結んでいたこともあります。

 

伊部駅駅名標(2018年4月)

 

伊部駅へのアクセスですが、大阪方面からはJR神戸線東海道本線)・山陽本線および赤穂線を経由する新快速播州赤穂行き」に乗ると便利です。

 

伊部地区の町並み(2018年4月)

 

新快速姫路駅、相生(あいおい)駅を経て播州赤穂駅に到着します。播州赤穂駅でレトロ感たっぷりの黄色い115系電車に乗り換えます。ここから30分ほどで伊部駅に到着します。

 

播州赤穂駅に停車する115系「備中高梁行き」(2018年4月)

 

伊部駅は備前焼伝統産業会館と接続している他、備前焼ミュージアムも駅に近接しています。

 

備前焼ミュージアム(2018年4月)

 

備前焼は日本六古窯(越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前)の一つであり、約1000年の歴史があります。

 

伊部地区の町並み(2018年4月)

 

2015年(平成27年)に岡山県備前陶芸美術館からリニューアルした備前焼ミュージアムでは、備前焼の歴史を伝える古備前や人間国宝の作品、現代作家の作品、また備前焼に関する資料などを展示しています。

 

伊部地区の町並み(2018年4月)


備前焼のふるさと

伊部駅から北へ歩いて行くと、備前市指定文化財となる天保窯があります。

 

天保窯の外観(2018年4月)

 

江戸時代の後期までは、南・北・西の三大窯で大量生産が行われていましたが、藩の保護の減少と燃料の関係により、大窯の融通窯として規模を縮小した3基の小窯が造られ、古備前写しの壷、茶器、花器、角徳利など小形の製品が作られるようになりました。天保窯はそうした窯の一つであり、1832年(天保3年)頃に造られました。

 

天保窯(2018年4月)

 

はじめは5室であったものが補修および改修されながら、1940年(昭和15年)頃まで使用されていたといいます。備前焼の古い窯のうち、こうした姿が残っているのはこの窯だけとなっています。構造としてはそれまでの窯より燃焼効率がよく、大窯の4分の1の十数日で焼き上げられるようになり、経費の節減や製品の回転を早めることができる画期的な窯となりました。

 

天保窯の外観(2018年4月)

 

履掛天神宮(くつかけてんじんぐう)は伊部駅より北西へ進み、不老川沿いにある神社です。

 

履掛天神宮(2018年4月)

 

創立年代は不詳ですが、菅原道真が大宰府へと西下する際にここにある大きな石で休憩したといいます。その大石(履掛石)が本殿の後ろにあり、現在でもこれを崇拝しています。また、本殿の屋根は備前焼の瓦となっています。

 

履掛天神宮(2018年4月)

 

 天津(あまつ)神社は1411年(応永18年)以前の創建であり、御神託により1579年(天正7年)に浦伊部より現在地に遷されました。

 

天津神社(2018年4月)

 

その本殿は1678年(延宝6年)の建築となり、堂々とした一間社(いっけんしゃ)建築は江戸時代の建築としては例のない優れたものです。

 

天津神社(2018年4月)

 

その境内には備前焼で葺いた門、現代作家の陶印入り陶板をはめ込んだ塀、備前焼陶板を敷きつめた参道などが配置されている他、参道脇には1861年(万延2年)の年号をもつ宮獅子が配置されています。

 

備前焼陶板を敷きつめた参道(2018年4月)

天津神社に見える備前焼(2018年4月)