両国駅と総武鉄道

投稿者: | 2025-10-19

「両国」の名

「両国」の名は、隅田川に架かる「両国橋」に由来します。現在の両国橋が架けられた当時は、隅田川の西側が武蔵国(現在の東京都の大部分と埼玉県および神奈川県の一部の地域)、東側が下総国(現在の千葉県北部と茨城県の一部の地域)であり、隅田川は二つの国境となっていました。両国橋は千住大橋に次いで二番目に隅田川に架けられた橋ですが、その正式名称は「大橋」という名でした。二つの国に架けられた橋であったことから、通称「両国橋」として親しまれてきましたが、1693年(元禄6年)に新しい橋が架けられたときに「両国橋」が正式名称となりました。新しい橋が架けられる少し前の1686年(貞享3年)、両国橋の東側の地域も武蔵国に編入されましたが、この辺りは「両国」という地名が残りました。

両国駅周辺(2019年10月)

両国駅と総武鉄道

両国周辺は、江戸時代の歴史と文化、相撲の文化などが残る地域であり、国技館、江戸東京博物館、旧安田庭園の他、回向院(えこういん)、すみだ北斎美術館などがあります。回向院は相撲発祥の地として知られる浄土宗の寺院であり、国技館には相撲博物館が併設されています。こうした名所の最寄り駅となるのが両国駅です。

両国駅(2019年10月)

両国駅は現在はJR東日本の駅ですが、もともとは1904年(明治37年)に総武鉄道が「両国橋駅」として開業したものです。両国橋駅は総武鉄道のターミナルとして開業し、東武鉄道も亀戸線(曳舟~亀戸間)を経由してこの駅に乗り入れていました。両国橋駅は開業当時、房総へ向かう総武鉄道と、北関東へ向かう東武鉄道の始発駅であると同時に、隅田川の水運とも接続する貨物の拠点となっていました。まさに、東京の「東の玄関口」として重要な駅だったといえます。

両国駅「幻のホーム」

両国駅には、日常的に総武線の列車が発着する1番線,2番線以外に、これらのホームとは別の場所にある3番線があります。

1番線・2番線ホームから見た3番線ホーム(2023年5月)

このホームは当時、房総方面へ向かう特急列車などが発着していた名残であり、貴重な鉄道遺産となっています。普段はシャッターで閉鎖されており定期列車は発着することがないので、「幻のホーム」ともよばれています。

3番線ホームへの階段(2023年5月)

このホームへの入口に通じる通路は「両国ステーションギャラリー」として開放されていて、両国駅の歴史や写真などが展示されています。

両国ステーションギャラリー(2023年5月)

1907年(明治40年)に総武鉄道は国有化され、1910年(明治43年)には東武鉄道が乗り入れを廃止しました。1931年(昭和6年)に「両国駅」とされ、1932年(昭和7年)には御茶ノ水駅まで開通し、現在の総武線となりました。

秋葉原駅を出発する総武線(2020年9月)