弾丸列車計画
東海道新幹線の車内では「Welcome to the SHINKANSEN. This is the NOZOMI superexpress bound for…」のように放送されます。新幹線のことを「superexpress」と表現しています。英語の辞書をみると、「bullet train(弾丸列車)」と書かれています。
東海道新幹線の車窓から見える富士山(2019年1月)
東海道新幹線の歴史は1939年(昭和14年)、軍事輸送を目的として動き出した弾丸列車計画に由来します。国会でも承認されたこの計画は、東京~下関間を最高時速200キロ、9時間で結ぶ新線を敷設するというものでした。将来的には海底トンネルを経て対馬・朝鮮半島・北京と結び、ドイツの首都ベルリンへの延伸をも想定する壮大な計画でした。計画は順次進められていきましたが、太平洋戦争の戦局が悪化する中、その計画は中止となります。
東京駅の東海道新幹線18番ホーム(2019年6月)
夢の超特急「ひかり号」
その後、中止となった弾丸列車計画は時を経て新幹線の建設へとつながっていくことになります。現在の東海道新幹線・山陽新幹線のルートはまさに弾丸列車計画のルートとほとんど同じです。
東海道新幹線の車窓から見える富士山(2018年12月)
そして、東海道新幹線の建設は順調に工事が進められ、1964年(昭和39年)に夢の超特急「ひかり号」が東京オリンピックの開催に合わせてデビューし、東京~新大阪間をたった4時間で結ぶようになりました。
東海道新幹線の車窓から見える富士山(2018年12月)
1964年(昭和39年)に華々しくデビューした0系新幹線は、当初は12両編成、車両数360両、最高時速210キロでした。世界で初めて時速200キロ以上の営業運転を実現したことから夢の超特急「ひかり号」とよばれることになります。0系新幹線の製造数は3,216両であり、その製造数は通勤車両103系電車に次ぐ多さとなりました。
0系新幹線が撮影された記念切符
0系16形
0系16形は新幹線グリーン車の中間車であり、車内には客室以外に乗務員室と荷物保管室が設置されています。その車内はゴールドを基調とした配色になっており、その居住性についても普通車と比べると格段にすぐれたものとなっています。座席は「2人+2人掛け」のリクライニングシートであり、その窓も普通車より大きいものとなっています。
京都鉄道博物館に展示される0系新幹線中間車(2019年1月)
京都鉄道博物館に保存される0系新幹線(2019年4月)
青梅鉄道公園に展示される0系新幹線(2020年10月)
新幹線の路線名称
1964年(昭和39年)に夢の超特急「ひかり号」としてデビューした新幹線も、現在では全国にその路線網を拡大しています。
東海道新幹線の車窓から見える富士山(2019年1月)
新幹線のうち東海道新幹線・山陽新幹線・東北新幹線・上越新幹線は、それに並行する在来線の輸送力が不足したことからその輸送力増強を目的として敷設されています。
品川駅に停車する700系(2018年8月)
したがって、それらの路線名称は、東海道新幹線の場合は東海道本線、山陽新幹線の場合は東海道本線・山陽本線・鹿児島本線、東北新幹線の場合は東北本線、上越新幹線の場合は高崎線・上越線・信越本線の別線という扱いになっています。山形新幹線・秋田新幹線の場合は在来線そのものであるため、その路線名称は奥羽本線・田沢湖線となります。
東海道新幹線指定券(2019年6月)
整備新幹線として完成した北陸新幹線は「北陸新幹線」という路線名称になっています。こちらの場合は、並行する在来線が経営から分離されるため、もともとの在来線が存在しなくなり、その別線扱いという考え方はできなくなってしまいました。したがって、新たに「北陸新幹線」という名称を設定しています。
車内で販売されるアイスクリーム(2019年3月)
開業50周年記念貨幣セットと東海道新幹線弁当
2014年(平成26年)に新幹線は開業50周年を迎えています。
新幹線開業50周年記念貨幣セット
これを記念して、記念通貨が発行されることになりました。
新幹線開業50周年記念貨幣セット
山形新幹線E3系、秋田新幹線E6系、九州新幹線新800系、北海道新幹線H5系の車両がデザインされたものが発行されています。
新幹線開業50周年記念貨幣セット
開業50周年の際、東海道新幹線50周年記念弁当が好評を博しました。この弁当の後継となるのが東海道新幹線弁当です。
東海道新幹線弁当(2019年3月)
関東地方の深川めし、穴子蒲焼、東海地方の黒はんぺん、海老フライ・みそかつ、関西地方の芋・たこ・南瓜の炊き合わせなどが詰まった弁当です。
東海道新幹線弁当の中身(2019年3月)
700系車両
0系新幹線の後、1985年(昭和60年)に100系、1989年(平成元年)に「グランドひかり」、1992年(平成4年)に300系、1997年(平成9年)に500系、1999年(平成11年)に700系、2007年(平成19年)にN700系がそれぞれ登場しています。
東京駅に停車する700系電車(2016年12月)
品川駅に停車する700系電車(2018年8月)
チップスター極「海の精焼き塩使用しお味」(2017年8月)
1.特急「こだま」の誕生 2.列車名「こだま」
700系こだま「東京行き」(2019年1月)
特急「こだま」の誕生
「こだま」が登場するまでの時代は、電車は短距離列車として充てられるものであり、長距離優等列車は機関車が客車を牽引する形で運行されていました。しかし、その騒音は大きく、乗り心地も悪かったため長距離列車としては不向きだったといいます。そうした中、東海道本線の全線電化が1956年(昭和31年)に完了し、国鉄では1957年(昭和32年)に90系(1959年/昭和34年以降は101系)が登場します。
京都鉄道博物館に展示される「こだま」(2019年1月)
90系(後の101系)はカルダン駆動方式を採用した電車でしたが、カルダン駆動方式とは電車において主電動機の回転を車軸に伝える装置の方式のことであり、この方式では伝達性能がよく、音が静かであるという特徴がありました。カルダン駆動方式は1960年代以降の日本の電車のほとんどで採用されている方式です。この90系(後の101系)の運行実績により、電車による長距離運転・高速運転が可能であるということが証明されたことになります。
90系(1959年/昭和34年以降は101系)が登場した翌年1958年(昭和33年)、「国鉄初の電車特急」として「こだま」が華々しいデビューを飾りました。当時客車列車のまま運行されていた「つばめ」および「はと」が東京~大阪間を7時間30分で走行していたのに対し、電車特急「こだま」はこれを6時間50分で結ぶことを実現しています。
京都鉄道博物館に展示される「こだま」(2019年1月)
「こだま」には20系(後の151系)が投入されますが、これは車体の軽量化が図られた他、空気バネを使用した台車やディスクブレーキが採用されるなど、当時の最先端のさまざまな技術が取り入れられていました。また、全車両に冷暖房装置や回転式シートが装備され、ビュッフェが初めて登場しました。その後、東海道本線では線路の改良も行われ、1960年(昭和35年)には東京~大阪間が6時間30分に短縮されています。人気を博した「こだま」は連日乗車率9割を誇り大成功を収めました。この大成功により「つばめ」や「はと」も1960年(昭和35年)には151系に取って代わられ、電車特急の運転が各地へ広がっていくようになります。
列車名「こだま」
1964年(昭和39年)に東海道新幹線が開業すると、列車名としての「こだま」は東海道新幹線の各駅停車タイプの列車名称として引き継がれることになります。後に「0系新幹線」と名付けられる電車が「こだま」にも充てられることとなり、東京~新大阪間の所要時間も5時間に短縮されました。
青梅鉄道公園に保存展示される0系新幹線(2020年10月)
1.山陽・九州新幹線
山陽新幹線路線図
山陽・九州新幹線
「山陽・九州新幹線」という用語は、2011年(平成23年)に九州新幹線が開業し、山陽新幹線との相互直通運転を開始したことにより使用されるようになりました。
新大阪駅に停車する九州新幹線「さくら」(2019年6月)
山陽新幹線では、東海道新幹線との相互直通運転を実施していたため「東海道・山陽新幹線」という用語も以前より使用されていました。山陽新幹線では「のぞみ」「ひかり」「こだま」が走る他、九州新幹線の「みずほ」「さくら」も乗り入れます。
「みずほ」「さくら」と表示される行先表示板(2019年10月)
山陽・九州新幹線の側面に描かれるロゴマークは相互協力し、乗り入れを実現するJR西日本とJR九州の関係について、手を携えて交わるような曲線で表現しています。
車両に描かれるロゴマーク(2019年10月)
JR西日本が管轄する山陽新幹線は新大阪~博多間の19駅を結んでいます。開業当初に設置された駅に加えて、1988年(昭和63年)に新尾道駅および東広島駅、1999年(平成11年)に厚狭駅が途中駅として新設されました。また、2003年(平成15年)には小郡(おごおり)駅が新山口駅と改称されました。
SLやまぐち弁当
新大阪~博多間を結ぶ「ひかりレールスター」(2019年1月)
山陽新幹線は1972年(昭和47年)に新大阪~岡山間を開業し、1975年(昭和50年)に岡山~博多間を開業して全通となりました。ところが、1987年(昭和62年)に山陽新幹線が国鉄からJR西日本へと引き継がれた当時、航空路線との激しい競合の中にありました。JR西日本にとって最も売り上げが見込める京阪神においても、北九州においても空港へのアクセスがよく、航空路線有利の状況は必至でした。
新大阪駅に停車する九州新幹線「さくら」(2019年6月)
こうした状況の中においても、山陽新幹線を走る列車は各駅停車「こだま」と東海道新幹線「ひかり」の延長運転中心のダイヤ構成となっていました。そこで、JR西日本では0系新幹線を改造した「ウエストひかり」を投入し、山陽新幹線内は新大阪・岡山・広島・小倉・博多に停車する速達列車や新大阪・新神戸・姫路・岡山・広島・小郡(現在の新山口)・小倉・博多などの主要駅に停車する列車を運行するようにしました。ところが、東海道新幹線「のぞみ」が山陽新幹線への直通運転を開始するようになると、「ウエストひかり」は山陽新幹線内で「のぞみ」の通過待ちを強いられるようになって、2000年(平成12年)には引退を余儀なくされました。そして、それと入れ替わるように登場したのが、当時の最新車両700系を利用した「ひかりレールスター」です。
700系「ひかりレールスター700系」(2019年1月)
2000年(平成12年)に登場した「ひかりレールスター」は現在でもは営業運転を続けており、新大阪~博多間を結んでいます。
「こだま」として運用される700系車両(2019年1月)
JR九州が管轄する九州新幹線は博多~鹿児島中央間を結ぶ路線であり、2011年(平成23年)に全通しています。
新鳥栖駅を出発する列車(2019年10月)
新鳥栖駅を出発する列車(2019年10月)
「みずほ」は新大阪~鹿児島中央間を結ぶ「山陽・九州新幹線」の最速達列車となっており、「さくら」は九州新幹線内で運行される速達列車となり、一部の列車は山陽新幹線にも乗り入れます。また、「つばめ」は九州新幹線内を走る各駅停車タイプの列車となっています。
「さくら」新大阪行きの表示(2019年10月)
800系新幹線
800系はJR九州の新幹線車両であり、2004年(平成16年)に初登場しています。
800系新幹線(2019年10月)
九州新幹線が全通してからは九州新幹線内「さくら」「つばめ」の折り返し運転のみに限定して運行されています。
800系新幹線(2019年10月)
特急かもめ(2019年10月)
新大阪駅に停車する九州新幹線「さくら」(2019年6月)