みやこ路快速と奈良県を走らない奈良線

投稿者: | 2018-12-31

1.奈良県内を走らない奈良線 2.稲荷駅とランプ小屋 3.六地蔵駅と六地蔵 4.JR奈良駅

 

桃山駅に到着する城陽行き普通列車(2017年12月)


奈良県内を走らない奈良線

奈良線木津~京都を結ぶJR西日本の路線です。

 

JR藤森駅~桃山駅間の奈良線(単線)の線路(2017年4月)

 

「奈良線」という名称にはなっているものの、起点の木津駅も終点の京都駅も京都府内の駅であるため、奈良県内を走らない奈良線ということになります。

桃山駅に到着する城陽行き普通列車(2017年12月)

 

近鉄京都線と並行する奈良線では2001年(平成13年)からみやこ路快速を運行しており、その停車駅は東福寺、六地蔵、宇治、城陽、玉水、木津となっています。みやこ路快速では転換クロスシートを設置する221系が使用されており、運賃以外の特別料金なしで乗車することができます。

 

JR藤森駅~桃山駅間の奈良線(単線)の線路(2018年4月)


稲荷駅とランプ小屋

現在の東海道本線は京都駅を出発するとそのまま東へ進んで山科駅へと向かいますが、かつては大きく右へカーブを切り鴨川を渡っていました。旧東海道本線のルートは現在の奈良線のルートと同じであり、鴨川を渡った後、稲荷駅へと向かいます。

 

稲荷駅ランプ小屋(2017年12月)

 

現在の名神高速道路を横切る手前あたりから奈良線と分岐し、名神高速道路を越えると現在の府道35号線と合流し、深草谷口町交差点あたりから大きく東へと向かいます。東へ回り込みながら少し北上し、現在の名神高速道路と沿うようにして滋賀方面へと向かい、山科駅(現在は廃止)に到着します。山科駅(現在は廃止)を出発すると、大谷駅(現在は廃止)、逢坂山トンネルを過ぎて馬場駅(現在の膳所駅)へと辿り着くというルートとなっていました。

 

工事中の膳所駅(2018年1月)

 

この稲荷駅にはランプ小屋がひっそりと建っています。ランプ小屋は現在でも全国に残っていますが、稲荷駅のランプ小屋は1879年(明治12年)に建築された赤煉瓦の建物であり、国鉄時代最古の建築物として貴重な遺構となっています。

 

稲荷駅ランプ小屋(2017年12月)

 

電気がまだ普及していなかった時代には、駅舎内の照明や機関車の前照灯(車両の進行方向を照らすために先頭部に取り付けられた灯火のこと。自動車でいうところのヘッドライトにあたる)などはすべて石油ランプが使用されていましたが、ランプ小屋はこれらの石油ランプやその燃料を保管したり、石油ランプを整備したりするための建物でした。可燃物を扱うというところから煉瓦製の建築物となっています。この国鉄時代最古の建築物は1970年(昭和45年)には準鉄道記念物に指定されています。鉄道記念物とは日本の鉄道に関する歴史的文化的に重要な事物などを指定して保存・継承するための制度であり、この制度により指定された事物などのことです。また、準鉄道記念物とは地方的に見て歴史的文化価値の高いものであり、将来鉄道記念物になりうるものをいいます。

 

稲荷駅ランプ小屋(2017年12月)

 

最古のランプ小屋がひっそり立つ稲荷駅は伏見稲荷大社を訪れる観光客で賑わいますが、もともと稲荷駅は1879年(明治12年)に京都~大谷(現在は廃止)間の官設鉄道(後の東海道本線)の延伸開通により開業しました。1921年(大正10年)に東海道本線が経路変更となると馬場(現在の膳所)~稲荷間が廃止になり、奈良線の稲荷~桃山間が開業したため稲荷駅奈良線の所属となりました。


六地蔵駅と六地蔵

みやこ路快速の停車駅ともなっている六地蔵駅の設置は比較的新しく、1992年(平成4年)に開業しました。

 

六地蔵駅(2016年9月)
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ここからカメラを左へ振ると地下鉄六地蔵駅が見えます。

 

地下鉄六地蔵駅(2016年9月)
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地下鉄六地蔵駅は2004年(平成16年)、地下鉄東西線が醍醐駅から六地蔵駅まで延伸された際に開業しています。

 

ホームドアの設置される地下鉄六地蔵駅ホーム(2018年7月)

 

六地蔵とは、京都市伏見区にある有名な浄土宗の寺院「法雲山浄妙院大善寺」のことをいいます。705年(慶雲2年)、藤原鎌足の子である定慧が創建したとされます。名前の由来となった六地蔵は、現在の大善寺には一体しかありません。平安時代の末期に、平清盛が大善寺他、京へ出入りする街道口に分けて安置したといわれています。

 

地下鉄六地蔵駅に停車する列車の車内(2018年7月)

 

大善寺へはJR六地蔵駅、地下鉄六地蔵駅から徒歩10分程度で行くことができます。また、京阪六地蔵駅も大善寺から徒歩10分ほどの距離にありますが、京阪六地蔵駅はJR六地蔵駅、地下鉄六地蔵駅とは異なる場所にあります。山科川を挟んで、東側にJR六地蔵駅と地下鉄六地蔵駅、西側に京阪六地蔵駅があります。JR六地蔵駅と地下鉄六地蔵駅宇治市京阪六地蔵駅は京都市伏見区となります。京阪六地蔵駅は1913年(大正2年)に京阪宇治線の敷設と同時に開業しています。

 

京阪六地蔵駅(2016年7月)
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JR奈良駅

奈良県を走らない奈良線ですが、木津駅以南については関西本線を経由して京都~奈良間を結ぶ直通列車があります。みやこ路快速もその一つであり、たとえば京都駅からみやこ路快速「奈良行」に乗車することができます。奈良駅は1890年(明治23年)、大阪鉄道が王寺~奈良間(現在の関西本線)を開通させた際に開業しています。1896年(明治29年)には奈良鉄道が木津~奈良間(現在の奈良線・桜井線)を完成させ、これが乗り入れるようになります。

 

奈良市総合観光案内所となった旧駅舎(2017年6月)

 

その後、関西鉄道が大阪鉄道を合併しますが、関西鉄道も国有化されたため奈良駅は1907年(明治40年)に国有鉄道の駅となります。この後、路線名を設定する際に、京都~木津間が奈良線となりますが、木津~奈良間が関西本線となってしまったため、奈良線が奈良県内を走らないということになってしまいました。

 

奈良駅西口(2017年6月)

 

1934年(昭和9年)になると、寺院風の2代目駅舎が完成します。

 

東口と西口を結ぶ通路から西口方向を見る(2017年6月)

 

その後、1999年(平成9年)に奈良駅の高架化が実施されることになり、この駅舎の解体の方針が発表されました。ところが、旧駅舎の保存を望む市民らの多数の署名により再検討を行った結果、この駅舎の保存が決定しました。

 

旧駅舎に隣接する奈良駅東口/写真右側に旧駅舎が並ぶ(2017年6月)

 

2004年(平成16年)に旧駅舎は少しばかり北へ移設され、2009年(平成21年)に観光案内所として再デビューを果たしました。

 

奈良市総合観光案内所となった旧駅舎(2017年6月)

 

新しい奈良駅は、2008年(平成20年)に関西本線の高架ホームが完成し、次いで2010年(平成22年)に桜井線の高架ホームへの移設が完了し、奈良駅の高架化がすべて完了しました。

 

西口ロータリー(2017年6月)