多摩湖鉄道の歴史

投稿者: | 2022-08-12

1.多摩湖と狭山湖 2.多摩湖鉄道から西武鉄道へ 3.多摩湖駅の歴史 4.萩山駅と多摩湖線の全通 5.国分寺駅から青梅街道駅へ 6.八坂駅と東村山中央公園

 

多摩湖線(西武鉄道)路線図


多摩湖と狭山湖

村山貯水池は1927年(昭和2年)、当時の東京市の人口増加に対応した水源確保を目的として完成した人造湖であり、通称「多摩湖」とよばれます。村山貯水池(通称「多摩湖」)は、その隣りにある山口貯水池(通称「狭山湖」)と連絡管で結ばれていて一体的な運用がなされています。

 

多摩湖駅駅名標(2021年3月)

 

この多摩湖・狭山湖一帯には、現在の西武鉄道の路線である多摩湖線・狭山線・山口線・西武園線が複雑に絡み合います。

 

西武球場前駅に停車する狭山線の車両(2021年3月)

 

多摩湖へは多摩湖駅(多摩湖線山口線)や西武球場前駅(狭山線と山口線)、西武園駅(西武園線)、武蔵大和駅(多摩湖線)からアクセスできます。

 

西武球場前駅に停車する山口線「レオライナー」の車両(2021年3月)


多摩湖鉄道から西武鉄道へ

堤康次郎は滋賀県選出の衆議院議員であり、西武グループの創業者です。その西武グループの前身となるのは堤康次郎が1920年(大正9年)に設立した箱根土地(後のコクド)です。

 

西武101系電車の車内(2021年3月)

 

箱根土地(後のコクド)は別荘地などを販売する土地会社として箱根や軽井沢の土地開発に乗り出した後、東京郊外の開発にも力を入れるようになりました。1924年(大正13年)には大泉学園の開発をはじめ、そこに東大泉駅(現在の大泉学園駅)を建設してこれを武蔵野鉄道に寄贈します。

 

西武球場前駅に停車する山口線「レオライナー」の車両(2021年3月)

 

また、1928年(昭和3年)には多摩湖や小平周辺を開発するために多摩湖鉄道(現在の多摩湖線)を設立し、国分寺萩山間を開業しました。1937年(昭和7年)、箱根土地堤康次郎は経営難となっていた武蔵野鉄道の株式を買収し、武蔵野鉄道の経営権を掌握してその再建に乗り出しました。1940年(昭和15年)には武蔵野鉄道は多摩湖鉄道を吸収合併しています。これが現在の多摩湖線の成立となります。

 

萩山駅に停車する多摩湖線の車両(2020年10月)


多摩湖駅の歴史

多摩湖駅は1936年(昭和11年)に開業していますが、開業当初は「村山貯水池駅」という駅名でした。戦時中には貯水池が攻撃目標となるのを避けるために、その駅名を「狭山公園前駅」と改称しました。戦争が終わると1951年(昭和26年)に「多摩湖駅」となり、1979年(昭和54年)には「西武遊園地駅」となっています。

 

国分寺駅に停車する「西武遊園地行き」(2020年6月)

 

西武園ゆうえんちは2021年(令和3年)、昭和レトロをテーマとして商店街やアトラクションなどが新設されてリニューアルオープンしました。その際、山口線の「遊園地西駅」はリニューアルオープンした西武園ゆうえんちのメインエントランス前となったため、「西武園ゆうえんち駅」と改称しました。

 

西武鉄道路線図(2021年3月)

 

また、1979年(昭和54年)に「西武遊園地駅」となっていた多摩湖線山口線の乗換駅は「多摩湖駅」と称することになり、42年ぶりに「多摩湖駅」の名称を復活しています。

 

多摩湖駅駅名標(2021年3月)


萩山駅と多摩湖線の全通

萩山駅には多摩湖線と拝島線が乗り入れています。萩山駅が開業したのは1928年(昭和3年)のことですが、その当時は多摩湖線の前身となる多摩湖鉄道の終着駅となっていました。

 

萩山駅駅名標(2020年6月)

 

多摩湖線は1928年(昭和3年)に本小平駅(現在は小平駅に統合)まで延伸され、1930年(昭和5年)には萩山駅で線路を分岐し、萩山駅~村山貯水池仮駅(現在の武蔵大和駅)間を開通しました。

 

萩山駅ホーム(2020年10月)

 

1936年(昭和11年)には武蔵大和駅(村山貯水池仮駅より改称)~村山貯水池駅(現在の多摩湖駅)を延伸開業し、多摩湖線の全通となります。その後、萩山駅は1958年(昭和33年)、現在と同じ場所に移されています。

 

萩山駅に停車する多摩湖線の車両(2020年7月)


国分寺駅から青梅街道駅へ

多摩湖線の列車は国分寺駅のホームを出発すると、一橋学園駅、青梅街道駅の順に停車しますが、一橋学園駅までの間にはかつて東国分寺駅、桜堤駅、一橋大学駅(商大予科前駅として開業)がありました。

 

青梅街道駅駅名標(2021年1月)

 

東国分寺駅は1933年(昭和8年)に開業しましたが、戦時中に一時休止となった後、1954年(昭和29年)に正式に廃止となりました。また、桜堤(さくらづつみ)駅は玉川上水沿いの桜を見るための観光客が利用する駅でしたが、東国分寺駅と同様に1928年(昭和3年)に開業して1953年(昭和28年)に廃止となっています。一橋大学駅(商大予科前駅として開業)は現在の一橋学園駅より数10メートルだけ国分寺駅寄りに存在した駅ですが、1966年(昭和41年)に一橋学園駅が開業してこれに統合されました。

 

青梅街道駅駅舎(2021年1月)

 

一橋学園駅を出発すると青梅街道駅へ向かいますが、この間にもかつて小平学園駅、厚生村駅がありました。小平学園駅は一橋大学駅(商大予科前駅として開業)と300メートルほどしか離れていない場所にあり、箱根土地が開発した小平学園都市に設置されたものです。小平学園駅も一橋学園駅が開業した際、一橋大学駅(商大予科前駅として開業)と同様に統合されています。厚生村駅は小平学園駅より200メートルほど青梅街道駅寄りに行った場所にありましたが、これも1953年(昭和28年)に廃止となっています。

 

青梅街道駅駅舎(2021年1月)

 

青梅街道駅は多摩湖線が青梅街道と交差する場所にあり、1928年(昭和3年)に開業しています。駅舎は1995年(平成7年)に改修工事を完了していますが、昭和時代を彷彿させるレトロな小さな駅舎となっています。しかしながら、青梅街道駅の周辺には、小平市役所をはじめとして小平警察署、小平市中央公民館、小平市立中央図書館などが集まっており、小平市の中心部ともいえる場所となっています。

 

青梅街道駅駅舎(2021年1月)


八坂駅と東村山中央公園

八坂駅多摩湖線の駅であり、第二次世界大戦中の1942年(昭和17年)に開業しました。当時陸軍の施設がこの近くに建設されることになったため、軍部からの要望により設置されたものです。八坂駅は1面1線の単式ホームであり、上下線とも同じホームより乗降します。

 

八坂駅(2020年6月)

 

東村山中央公園は八坂駅近くにある都立公園であり、約12.1ヘクタールの敷地面積を誇ります。1986年(昭和61年)に通産省工業技術院機械技術研究所の跡地に開園しました。

 

東村山中央公園(2020年9月)

 

公園内にはさまざまな樹木があり、コナラ、アカマツ、クヌギ、サクラ、ケヤキ、ツバキ、クスノキ、クルミ、ハナミズキ、チューリップ、ポピー、ヒマワリ、コスモス、キクなどが見られます。多摩湖線東村山中央公園の北側を走ります。

 

東村山中央公園の北側を走る多摩湖線(2020年9月)