日光線・烏山線[JR東日本]

投稿者: | 2020-01-05

1.「駅弁発祥の地」宇都宮駅 2.日光線の歴史 3.大谷石

 

宇都宮駅(2020年1月)


「駅弁発祥の地」宇都宮駅

宇都宮駅には現在、東北新幹線および山形新幹線の他、東北本線烏山線日光線が乗り入れています。もともと宇都宮駅が開業したのは1885年(明治18年)のことであり、当時の日本鉄道(現在の東北本線)の駅として開業しました。

 

宇都宮駅(2020年1月)

 

その開業した当時の宇都宮駅では、旅館業を営んでいた白木屋が「ごま塩をまぶしたおにぎり2個とたくあん2切れ」を竹の皮で包んで販売しました。このことから、宇都宮駅は日本で初めて駅弁が販売された「駅弁発祥の地」としても知られています(諸説あり)。当時の駅弁業者としては白木屋の他、松廼屋(まつのや)、富貴堂の3軒があったといいます。

 

松廼屋「とりめし」(2016年12月)

 

日本鉄道構内営業中央会は1993年(平成5年)、4月10日は「駅弁の日」と定めました。これは「弁」という字を分解すると「4」と「十」に分けることができるということに由来します。宇都宮駅で駅弁が最初に販売されたという7月16日という案もあったそうですが、この日は駅弁記念日となっています。


日光線の歴史

日光線は栃木県の県庁所在地となる宇都宮駅と日本屈指の観光都市である日光駅を結ぶ路線であり、朝夕の通勤・通学客が主に利用しています。「日光を見ずして結構と言うな」という言葉があるように、歴史的建造物とその周辺の風景は古くから多くの人々に愛されてきました。また、1999年(平成11年)には「日光の社寺」(日光東照宮・日光二荒山神社・日光山輪王寺)が世界文化遺産として登録されました。

 

世界遺産「日光の社寺」登録20周年ヘッドマーク(2020年1月)

 

当初日光線の敷設を計画したのは日光鉄道という鉄道会社でしたが、日本鉄道がその計画を継承して1890年(明治23年)に宇都宮~今市間を開通させました。そして、同年にこの路線は日光駅まで延伸され、その後、1909年(明治42年)に「日光線」と命名されています。

 

宇都宮駅に停車する日光線の車両(2020年1月)

 

当時は上野~日光間において直通列車が運行されており、観光地である日光へと多くの乗客を運んでいました。しかしながら、1929年(昭和4年)に東武日光線が開通すると、これは国鉄の巨大なライバルとなります。

 

宇都宮駅の日光線ホーム(2020年1月)

 

東武日光線の浅草~東武日光間は国鉄の上野~日光間と比べるとその距離は短く、また国鉄の場合には宇都宮駅では折り返し運転が必要となりますが、東武日光線は新栃木駅を過ぎると東武宇都宮線と分岐して東武宇都宮駅へと向かわずに直接日光へと北上します。

 

宇都宮駅の日光線ホーム(2020年1月)

 

国鉄ではこうした不利を解消するため、1956年(昭和31年)には上野~日光間において準急「日光」の運行を開始します。1959年(昭和34年)になると全線電化を完了し、東京~日光駅間の所要時間を2時間以内へと短縮しました。さらに、伊東~東京~日光間を結ぶ準急「湘南日光」の運行も開始し、その他にも多くの優等列車の運行に取り組みました。しかし、東武鉄道もこれに対抗して対策を講じた結果、東武日光線へと乗客は傾いていき、1982年(昭和57年)の東北新幹線の開通をもって急行「日光」は廃止となり、東北本線直通列車も本数が減少されてしまいました。


大谷石

大谷石(おおやいし)は栃木県宇都宮市の大谷町付近一帯で採掘される軽石凝灰岩であり、柔らかく加工がしやすいため、古くから外壁や土蔵などの建材として使用されてきました。1979年(昭和54年)に開館した大谷資料館は大谷石採石に関する博物館となっています。

 

大谷資料館(2019年12月)

大谷資料館入場券(2019年12月)

 

大谷資料館にある地下採掘場跡は、1919年(大正8年)~1986年(昭和61年)の間に大谷石を掘り出してできた2万平米にもおよぶ地下空間となっています。

 

大谷資料館における巨大な地下空間(2019年12月)

 

戦時中には地下の秘密工場として使用された他、戦後は政府米の貯蔵庫として利用されました。

 

大谷資料館における巨大な地下空間(2019年12月)

 

現在では地下採掘場跡として公開されている他、コンサートや美術展などにも使用されています。

 

大谷資料館における巨大な地下空間(2019年12月)

 

たとえば、2019年(令和元年)には華道家である假屋崎省吾氏の世界展「華寿絢爛 in 大谷資料館」が開催され、巨大な地下空間に假屋崎省吾氏の作品が展示されました。

 

巨大な地下空間に展示される作品(2019年12月)

 

1885年(明治18年)に現在の東北本線、1890年(明治23年)に現在の日光線となる日本鉄道の路線が開通すると、当時の厳しい道路状況もあったことから、この大谷石を輸送する手段としての鉄道路線敷設が計画されるようになりました。

 

大谷資料館における巨大な地下空間(2019年12月)

 

1896年(明治29年)に宇都宮軌道運輸が設立されると、翌年西原町~荒針間に人車軌道(人の力で客車や貨車を押す鉄道)を開業しました。

 

大谷資料館に展示される人車軌道(2019年12月)

 

その後、宇都宮軌道運輸は路線の拡大を図り、1898年(明治31年)には荒針~立岩・弁天山間、1903年(明治36年)には西原町~材木町間を延伸しています。さらに同年、西原町~鶴田間を延伸して日光線の鶴田駅への接続を果たしました。

 

地下空間から見える地上の光(2019年12月)

 

1906年(明治39年)になると、戸祭~新里間、戸祭~徳次郎間において新里石を輸送していた野州人車鉄道を吸収して自社の路線と接続しました。宇都宮軌道運輸は社名変更により宇都宮石材軌道となり、石材輸送に加えて旅客輸送も担うようになったものの、相変わらず人車軌道のままでした。

 

大谷資料館における巨大な地下空間(2019年12月)

 

その後も石材の需要は拡大を続け、宇都宮石材軌道は1915年(大正4年)に荒針~鶴田間において大谷石輸送のための専用線を敷設し、蒸気機関車による輸送を開始しました。

 

巨大な大谷石(2019年12月)

 

にもかかわらず、採掘に石材の輸送が追いつかない状況が見られました。そうした中、大正末期になると自動車網も発達するようになり、宇都宮石材軌道は経営的にも厳しい状況となりました。

 

大谷資料館における巨大な地下空間(2019年12月)

 

昭和に入ると東武鉄道は栃木県に進出するにあたり、1931年(昭和6年)に宇都宮石材軌道を吸収合併して東武宇都宮線を開通させました。東武鉄道は石材輸送専用線を新鶴田駅から分岐し、これを東武宇都宮線の西川田駅に接続するとともに、その一方でそれ以外のすべての旧宇都宮石材軌道の路線を廃止しました。戦時中は地下採掘場跡は秘密工場として利用されたため、石材輸送専用線は軍需用として使用され、戦後まで路線は残りました。最終的には1964年(昭和39年)に新鶴田~西川田間が廃止されたことによってすべての路線は廃止となりました。

 

青い光に照らされる神秘的な地下空間(2019年12月)


1.烏山線と宝積寺駅 2.烏山線と七福神 3.蓄電池電車「ACCUM(アキュム)」 4.烏山駅

 

烏山線を走る車両(2020年1月)

【烏山線】

([宇都宮]―[岡本]→)[宝積寺]―[下野花岡]―[仁井田]―[鴻野山]―[大金]―[小塙]―[滝]―[烏山]


烏山線と宝積寺駅

烏山線は栃木県内を走る路線であり、宝積寺(ほうしゃくじ)~烏山間を結んでいます。

 

宝積寺駅開業120周年「宝積寺~大金」間きっぷ台紙(2020年1月)

 

烏山線のほとんどの列車は宝積寺~岡本~宇都宮間にも乗り入れています。

 

宝積寺駅の外観(2020年1月)

 

烏山線の起点となる宝積寺駅は烏山線が開通以前の1899年(明治32年)に日本鉄道の駅として開業し、2019年(令和元年)に開業120周年を迎えています。

 

宝積寺駅の外観(2020年1月)

 

これを記念したイベントでは往復乗車券を購入すると、往復乗車券記念台紙をもらうことができました。

 

宝積寺駅の外観(2020年1月)

 

現在の宝積寺駅は2008年(平成20年)、建築家の隈研吾氏によって完成したものです。

 

駅の構内の様子(2020年1月)

 

駅の外観に対して、その内部にも一般の駅とはちがった斬新なデザインを見ることができます。

 

駅の構内の様子(2020年1月)


烏山線と七福神

烏山線内には宝積寺駅や大金(おおがね)駅といった縁起の良い名前をもつ駅があることにちなんで、宝積寺駅を除く烏山線7駅と七福神を関連付けてPRしています。

 

烏山駅駅名標(2020年1月)

 

往復乗車券記念台紙には「宝積み、大金となり、福来たる」とあります。

 

宝積寺駅開業120周年「宝積寺~大金」間きっぷ台紙(2020年1月)


蓄電池電車「ACCUM(アキュム)」

烏山線を走る電車EV-E301系「ACCUM(アキュム)」烏山線に登場したのは2014年(平成26年)のことでした。2017年(平成29年)には烏山線を走るキハ40形気動車のすべてに取って代わりました。

 

EV-E301系「ACCUM(アキュム)」(2020年1月)

 

愛称の「ACCUM(アキュム)」という名は蓄電池を意味する「accumulator」から取られていて、この車両はその名の通り直流蓄電池電車となっています。

 

電車の側面に記された「ACCUM」の文字(2020年1月)

 

蓄電池電車とは動力源として蓄電池から供給される電力により走行する車両であり、車両内部に走行用のリチウムイオン電池を搭載していますが、屋根の上には集電装置(パンタグラフ)も取り付けられています。

 

屋根の上にあるパンタグラフ(2020年1月)

 

この車両は、電化区間では集電装置(パンタグラフ)を上昇させて架線から電力により走行し、非電化区間においては集電装置(パンタグラフ)を降下させて蓄電池の電力のみで走行します。

 

EV-E301系「ACCUM(アキュム)」(2020年1月)

 

この電車は電化区間(宇都宮~宝積寺間)では走行中に充電できる他、烏山駅宝積寺駅停車中に充電をします。

 

EV-E301系「ACCUM(アキュム)」(2020年1月)


烏山駅

烏山線の終点となる烏山駅烏山線の開通と同時に開業しました。

 

烏山駅駅舎(2020年1月)

 

開業当時の烏山駅舎は瓦葺き切妻屋根の木造平屋建てであり、屋根にはドーマー窓があり、正面平側の中央には切妻屋根の下屋を出した車寄せが付いていました。

 

国鉄烏山駅舎の説明(2020年1月)

 

ドーマ―窓とは、屋根面に対して直角に取り付けられた三角形や半円形の小窓であり、採光や換気のために設置されていました。現在の駅舎にはドーマ―窓はありませんが、全体的な外観はかわっていません。

 

烏山駅駅名標(2020年1月)