鹿島鉄道線[鹿島鉄道]/鉾田線[関東鉄道]

投稿者: | 2022-10-30

鹿島鉄道線/鉾田線

鹿島鉄道線(石岡—石岡南台—南田中—玉里—新高浜—四箇村—常陸小川—小川高校下—桃浦—八木蒔—浜—玉造町—榎本—借宿前—巴川—坂戸—鉾田)は、常磐線の石岡駅から小美玉市および行方市を経由して鉾田駅へ至る27キロを結ぶ路線でした。

「ほっとパーク鉾田」に保存されるKR-505(2024年11月)

1924年(大正13年)に鹿島参宮鉄道の路線として開業した後、1965年(昭和40年)には関東鉄道鉾田線、1979年(昭和54年)には鹿島鉄道鉾田線、1989年(平成元年)には鹿島鉄道鹿島鉄道線となり、2007年(平成19年)に廃止となっています。

「ほっとパーク鉾田」に保存されるキハ601(2024年11月)

廃線の少し前には列車はほぼ1時間に1本程度運行されていて、石岡~鉾田間の所要時間は1時間半弱程度で結んでいました。

「ほっとパーク鉾田」に保存される駅名標(2024年11月)

廃線後に関鉄グリーンバスはほぼこの路線に沿った形式での路線バス(愛称「かしてつバス」)の運行を開始しています。2010年(平成22年)になると、石岡~常陸小川(現在は「小川駅」)間の廃線跡はバス専用道となり、バスはこの道路を走って運行されるようになりました。また、茨城空港への連絡バス(石岡ルート)も石岡駅~小川駅間のバス専用道を経由して、茨城空港へと向かいます。

茨城空港(2022年10月)


茨城空港

茨城空港は2010年(平成22年)に開港しました。この空港はもともと航空自衛隊百里飛行場であり、これを民間共用化したものです。札幌,神戸,福岡,長崎,鹿児島,那覇,下地島,台北,上海,西安との間を結んでいます。

茨城空港ターミナルビル(2020年6月)

茨城空港は茨城県小美玉市に所在します。小美玉市は2006年(平成18年)に小川町,美野里町,玉里村が合併して成立しました。

ゆるキャラ「ねば~る君」(2020年6月)

茨城空港近辺には鉄道駅がありませんので、鉄道でアクセスすることはできません。ただし、車でアクセスするにはとても便利な場所にあり、(東関東道)茨城空港北IC,(常磐自動車道)石岡小美玉スマートIC,千代田石岡ICなどからアクセスできます。空港駐車場の料金も無料となっています。

茨城空港駐車場(2020年6月)

また、茨城県の各地からバスによるアクセスも可能です。最寄り駅となる石岡駅の他、羽鳥駅,水戸駅,新鉾田駅などと茨城空港もバスで結ばれています。つくばからのバスは当面の間、運休となっています。

茨城空港へのバス路線図

地図内に小川駅とありますが、これは鉄道駅ではなく「かしてつバス(鹿島鉄道線廃止代替バス)」の停留所です。ここはかつて鹿島鉄道線(鉾田線)の常陸小川駅のあった場所であり、鉄道駅は2007年(平成19年)に鹿島鉄道線の廃止とともに廃駅となっています。

茨城空港ターミナルビル(2020年6月)

茨城空港ターミナルビル南側には茨城空港公園が隣接します。ここには自衛隊の「RF-4EJ戦術偵察機」と「F-4EJ改要撃戦闘機」の2機が展示されています。

RF-4EJ戦術偵察機(2020年6月)

RF-4EJ戦術偵察機は、戦闘機に偵察機器を装備した偵察機転用機です。偵察航空隊は百里基地に所在する航空自衛隊唯一の偵察機部隊です。展示機は1991年(平成3年)に偵察機への改修が行われたものであり、東京~大阪(約500キロ)間ならば11分程度で飛ぶことができます。

F-4EJ改要撃戦闘機(2020年6月)

F-4EJ改要撃戦闘機は要撃戦闘能力や対地対艦攻撃能力に優れています。これはF-4EJ戦闘機を改修したものであり、レーダーなどの能力が向上しました。この機体も東京~大阪(約500キロ)間ならば11分程度で飛ぶことができます。

茨城空港(2020年6月)

また、茨城空港公園内には小高い丘があり滑走路を眺めることができます。飛行機の離着陸する様子もよく見えます。

茨城空港開港記念碑の後ろに小高い丘が見える(2020年6月)

茨城空港のすぐ近くに空のえき「そ・ら・ら」があります。小美玉市は農業や酪農が盛んなまちですが、「そ・ら・ら」の物産館では小美玉市の特産品などを販売しています。

空のえき「そ・ら・ら」駐車場(2020年6月)

「そ・ら・ら」には農産物直売所もあり、小美玉市の農家で育てられた野菜などが販売されています。

空のえき「そ・ら・ら」(2020年6月)


鹿島参宮鉄道時代

明治時代後期になると、行方地区を縦貫して鹿島神宮へ至る路線の敷設が提案されるようになります。1921年(大正10年)には、地元の有力者たちを中心として行方鉄道が設立され、1922年(大正11年)に「鹿島参宮鉄道」に社名を変更しました。

「ほっとパーク鉾田」に保存される車両(2024年11月)

鹿島参宮鉄道はその名に示す通り、鹿島神宮への参拝客を輸送することを目的として設立されました。1924年(大正13年)に石岡~常陸小川間を開業した後、1926年(大正15年)に常陸小川~浜間を延伸開業しました。

鹿島神宮(2020年1月)

続いて、1928年(昭和3年)に浜~玉造町間,1929年(昭和4年)に玉造町~鉾田間が開通し、石岡~鉾田間となりました。


関東鉄道時代~鹿島鉄道時代

1965年(昭和40年)に、鹿島参宮鉄道と常総筑波鉄道が合併して関東鉄道となりました。これにより鹿島参宮鉄道の石岡~鉾田間の路線は「関東鉄道鉾田線」となります。

「ほっとパーク鉾田」に保存されるキハ601(2024年11月)

しかし、自動車輸送の発展などにより乗客数は振るわず、1979年(昭和54年)に鉾田線を関東鉄道より分離し、関東鉄道の完全子会社となる鹿島鉄道を新設して「鹿島鉄道線」としました。

「ほっとパーク鉾田」に保存されるKR-505(2024年11月)

鹿島鉄道線は、通学客の輸送の他、葉タバコなどの農産物、自衛隊百里基地への燃料輸送などを担ってきましたが、2002年(平成14年)に燃料輸送が廃止され、さらに経営が悪化しました。

「ほっとパーク鉾田」に保存される車両(2024年11月)

その後も、鹿島鉄道の親会社となる関東鉄道や近隣自治体が経営支援をしてきましたが、つくばエクスプレスなどの開業により減収となった関東鉄道が経営支援を打ち切ることを決断し、ついに2007年(平成19年)に鹿島鉄道線は廃止となりました。

鉾田駅跡(2022年2月)


浜駅

浜駅は「道の駅たまつくり」から徒歩20分程度の場所にありました。

「道の駅たまつくり」(2022年2月)

「道の駅たまつくり」は2001年(平成13年)に開業し、これには1992年(平成4年)に開園した霞ヶ浦ふれあいランド・水の科学館(2020年/令和2年閉館)が隣接します。水の科学館は2024年(令和6年)に再整備されて「霞ヶ浦どうぶつとみんなのいえ」(屋内型動物園)となりました。

霞ヶ浦ふれあいランド・水の科学館(2022年2月)

また、「道の駅たまつくり」には近隣のシンボルとなる展望塔「虹の塔」があり、高さは64メートルとなっています。

玉造・虹の塔(2022年2月)

1926年(大正15年)に常陸小川~浜間が延伸開業された際、浜駅は当時の終着駅となりました。1927年(昭和2年)には、浜駅に隣接する発着場から汽船(霞ヶ浦航路)によって麻生,牛堀,潮来を経由して鹿島神宮までを結び、参詣客を運んでいます。

霞ヶ浦より遠くに見える筑波山(2022年2月)

1929年(昭和4年)、鹿島参宮鉄道は鉾田駅まで開業させ、全通となりますが、結果的には鉄道路線による「鹿島参宮鉄道」としての目的の達成、すなわち参詣客を鹿島神宮へ運ぶことはできませんでした。

霞ヶ浦大橋(2022年2月)

汽船事業としては1929年(昭和4年)に新たに佐原航路も開いていますが、汽船の利用客はあまり増加せず、1931年(昭和6年)に鹿島鉄道船舶部の汽船事業は水郷観光汽船(現在のラクスマリーナ)に併合されてしまいます。

「道の駅たまつくり」からのぞむ霞ヶ浦の風景(2022年2月)


新高浜駅

新高浜駅付近(2022年2月)


鉾田駅

鉾田駅は「関東の駅百選」にも認定された駅でしたが、現在ではその駅があったのと同じ場所にホーム跡だけが残っています。

鉾田駅跡(2022年2月)

そのプラットホームの崩れた姿がとても寂しく感じられます。

鉾田駅跡(2022年2月)

鉄道の終点となっていた鉾田駅前にはバスターミナルがありましたが、廃駅後もそのまま使用されており、停留所名は「鉾田駅」となっています。

鉾田駅バスターミナル(2022年2月)

鉾田線/鹿島鉄道線はもともと、鹿島神宮への参拝客を運ぶことを目的としていましたが、結果的に鉾田駅が終着駅となりました。

鉾田駅駅名標(2024年11月)

これは当初の行方地区を縦貫して潮来,延方へ向かうというルートを変更して、発展しつつあった鉾田へ向かうというものでした。

「ほっとパーク鉾田」(2024年11月)

また、当時、計画中であった鹿島軌道(大洗~鉾田~息栖)とも結ぶことができるということで、経営上も有益だと判断されました。

鉾田駅バスターミナル(2022年2月)

かつての鉾田駅に保存されていたキハ601とKR-505は「ほっとパーク鉾田」に移設されて保存されています。

キハ601(2024年11月)

KR-505(2024年11月)

「ほっとパーク鉾田」には温泉や温水プール,トレーニングルーム,バーベキュー場などの施設があります。

「ほっとパーク鉾田」周辺の風景(2024年11月)